古民家鑑定では築50年以上の伝統構法や在来工法で作られた古民家の住宅診断をします。
その古民家に合わせた住宅診断をしてもらうことで、リフォームや古民家物件購入の判断材料にもなります。
また古民家鑑定書はインスペクション(建物調査)の結果が記載されるとともに「家歴書」という「住宅履歴書」の役割ももっています。
- 古民家や古い空き家をリノベーションしたいが現状のまま行っていいかわからない
- 古民家を購入予定だが、リフォーム費用がどれくらいかかるか知りたい
- 建替か解体か迷っている など
そもそも自分の家は古民家なのか?とギモンの方はこちらを読んでみてください。築50年以上経っていれば古民家と呼べるでしょう。
古民家鑑定の種類と費用
古民家鑑定の依頼方法は2通りありますが、それぞれ内容が異なってくるため確認が必要です。
- 「古民家再生総合調査」のひとつとして行われる古民家鑑定士による調査
- 50万円(税抜)
- 「伝統的構法による木造建築物状況調査技術者(伝木)」による調査
- 10万円(税抜)
ここでは、1の古民家鑑定士による古民家鑑定の内容を紹介します。
2の「伝統的構法による木造建築物状況調査技術者(伝木)」による調査は1950年以前に建てられた伝統構法の古民家に特化したインスペクションを行うものです
古民家再生総合調査に含まれる古民家鑑定
古民家再生総合調査は一般社団法人全国古民家再生協会に依頼することで調査ができ、協会に所属している古民家鑑定士が行います。
50万円はなかなか高いわね……
最近30万円から値上がりしています……
安全のためではあるけど……
古民家再生協会では古民家鑑定単独での調査は受け付けていません。
建築士や工務店がウェブサイトに古民家鑑定について載せているところもあるようです。協会の事業者会員かもしれませんが、会社をよく確認してみることが必要です。
今回の記事ではあくまで古民家再生協会の古民家鑑定の内容をお伝えしていますので、お気をつけください。
悪質なところは会社の利益になりやすい
結果を出されてしまうこともありますよ
古民家鑑定で分かること
ホームインスペクションを行なっている会社や団体はありますが、多くが現在の中古住宅を対象としたもので、古民家に合わせた調査項目があるのは古民家鑑定だけです。
古民家鑑定の調査内容
評価項目は主に8つの項目に分けられ、519の調査項目がひとつひとつ調べられていくことになります。
古民家鑑定の8つの評価項目
下記のような大項目が柱となっています。概要はあくまでも一部です。
新築と同じ状態を100点とし519項目の確認によって減点法で評価されます。傷んでいる箇所や傷み具合、リフォームの必要な箇所が多いほど減点されていくことになります。
古民家の鑑定結果と古民家鑑定書に記載される内容
古民家鑑定結果
鑑定結果は以下の6段階で記載されます。
川上幸生「古民家の調査と再築」一般社団法人住まい教育推進協会(2019)323頁
残念ながら再生は難しいようです 伝統資材の買い取りでの解体が可能です 伝統資材の再活用が可能です コストがかかりますが再生可能です 再生移築が可能です 現状のまま維持可能です
持ち主さんはこの結果にきっとちょっとドキドキしますね
伝統資材とは築50年以上たった家で使われていた木材(古材)などです。
使えるものは残して再利用可能なのが古民家のいいところだね
古民家の評価額と注意点
古民家鑑定書には固定資産税で評価される価値とは違う、家自体の鑑定評価額が明示されます。
ただし、これは法的な不動産評価の鑑定書ではないことに注意して下さい。
古民家のリユース促進のため、一般社団法人住まい教育推進協会独自の判断基準に基づいたものです。そのため古民家の売買のための法的書類とはなりません。
あくまで古民家が伝統的・文化的・環境的特徴をもった後世に残すべきものとして評価されるものです。
法的な鑑定であれば「既存住宅状況調査技術者資格者」や
「伝統的構法による木造建築物状況調査技術者」による調査が必要です
解体した場合の二酸化炭素排出量
古民家は解体しても通常の中古物件ほど環境負荷は大きくなりません。
古民家鑑定書にはブナの木が1年間に吸収する二酸化炭素量に換算し、解体によってどれだけの本数になるかが記載されています。
古民家鑑定士所見
調査には4人の古民家鑑定士が現地に出向きます。鑑定書には建物の維持管理やこれまでの改修履歴について所見が書かれます。
鑑定結果を渡される時には、他にも様々なアドバイスや提案もしてもらえます。質問など遠慮なくしてみましょう。
これからのための予防保全計画
今後30年間のメンテナンス計画が記載されます。鑑定評価をもとにその古民家の弱くなっているところや今後気をつけていかなければならない箇所を中心に、「予防保全計画書」がつくられます。
古民家鑑定士は計画書に基づいて定期的にその古民家を訪れて維持管理の手伝いやアドバイスを行なっていきます。
家歴書(住宅履歴書)
古民家鑑定書は家歴書としての役割もあります。
住宅履歴書とも呼ばれ、2009年に施工された「長期優良住宅の普及促進に関する法律」の中で示されている住宅の履歴簿のことです。
古民家は長く大切に使われてきた家です。
これからは既存住宅活用の需要が高まり、そういった建物も同じように循環型建築として残していくために記録の有無が将来の資産価値を左右する大切な判断基準になってきます。
家を受け継ぐ人は家歴も残す役割を担うことになるんだね
古民家鑑定してもらったほうが良いのか?
余裕があればもちろん依頼することをおすすめします。519の調査項目の中には自分では思いもよらない重要な項目がいくつもあることでしょう。
家の状態をよく知らず危険な状態のまま住み続けてしまったり、購入してリフォームをしても失敗する可能性もあります。
もちろん、大きな費用がかかることではあるので専門家に相談したり、「木造住宅簡易鑑定」(税抜3万円)などをまずは依頼してみるという方法もあります。
鑑定の結果、管理ができない場合は【訳アリ物件買取PRO】など古い家でも買い取ってもらえる業者さんに相談するなど、とにかく放っておかないようにしましょう。