古民家の6つの代表的な天井の仕上げ方 

竿縁天井古民家の空間と部位
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古民家で見られる天井には格天井、竿縁天井、敷目板天井など豊富な意匠(デザイン)が見られます。

構造と繋がりながらも自由なデザインが可能となった天井の発明は日本建築のなかでは画期的なできごとで、なかでも茶室の影響は大きいものがありました。

天井ははじめは格式高い建物しか用いることができませんでしたが、時代を経て一般民家にも取り入れられるようになりました。建具などと同じく実は膨大なバリエーションのある天井の仕上げ方を見ていきましょう。

天井の形状についてこちら
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天井の種類と仕上げ材

天井は木板で作られるのが一般的で、面積も広く人の目が直接触れるところでもあるため木目にこだわって張られます。また、格縁や竿縁と呼ばれる天井に組まれる細い仕上げ材にもそれぞれ決まりごとがあったりします。

格天井(ごうてんじょう)

格天井
鏡板の縦横の木目が交互に張られている格天井

格天井は格縁(ごうぶち)という角材を格子状に組み、正方形の鏡板(一枚板)を張った天井です。

荘厳で格式の高さが見て取れる格天井は寺院や書院でもみられます。古くは鎌倉時代から、明治以降は西洋建築にも用いられてきました。

格縁には面取りが施されたり、鏡板には四季の花などの絵や織物を貼るなど装飾されることもあります。鏡板は杉や檜、松などの木が使われています。

竿縁天井(さおぶちてんじょう)

竿縁天井
竿縁と天井板は直角に交わる

一般民家ではもっとも多く見られるのが竿縁天井です。竿縁とよばれる細い仕上げ材を並べその上に天井板をのせます。竿縁は天井を支える役割もあります。

竿縁天井にはいくつかの約束事があります。

竿縁天井の伝統的な約束事
  1. 竿縁は平行にかけ渡し、天井板はその直交方向にのせる
  2. 竿縁は床の間と平行にする
  3. 廊下など長方形の天井では竿縁と天井板でできる格子を正方形にしない

特に2の床の間との方向を平行ではなく直交にすることは床差し(とこざし)と言われ、床指し・床刺しとも書きますが不吉で忌み嫌われています。現在ではデザインとして稀に用いられることもあるようですが、基本的には禁忌とされています。

竿縁には杉やツガなどがよく使われます。

目透かし天井(めすかしてんじょう)・敷目板天井(しきめいたてんじょう)

目透かし天井

目透かし天井は近代以降に多くなった簡便な天井で現在もっとも多く用いられています。竿縁がなく、継ぎ目をくっつけずにわざと間をあけて目地をとって張られます。目地の深さや幅、材質などを組み合わせることで様々なデザインのものがあります。

目透かし天井のなかでも目地底に敷目板をとりつけたものを敷目板天井と呼びます。

敷目板天井のつくり
敷目板天井のつくり

踏み天井(ふみてんじょう)

ナガタパン1階
踏み天井と思われる福岡 箱崎のナガタパンの一階部分

上階の床下地をそのまま下階の天井として見せている形式が踏み天井です。階高(下階の床から上階の床までの高さ)を低く抑えたい時に使われます。表し床(あらわしゆか)とも呼ばれます。

ナガタパンは昭和レトロもあふれる地元のパン屋さん

網代張り天井(あじろばりてんじょう)

市松編み
市松編み

網代(あじろ)とは杉やサワラ、ヒノキ、ネズコなどのへぎ板や竹皮などを縦や横、斜めに編んだものです。この網代を天井の下地板に張りつけたものが網代張り天井です。

茶室や数寄屋建築でよく使われていましたが、今は一般の床の間でも見ることができます。

へぎ板(へぎいた)

木の繊維を壊さないよう削らずに厚さ1mm以下に手でさいた板。その薄さのため、数百年ものの目が詰まった天然木でなければ作ることができない。年が経つほど艶が出る。職人が少ない。

網代の編み方や素材を組み合わせることで多様なデザインが出来上がります。一部をのせておきます。

ヘリンボーンのような模様の矢羽根編み(やばねあみ)

矢羽根編み

籠目編み(かごめあみ)。市松模様と違って隙間を開けて編まれる

籠目天井

石畳編み(いしだたみあみ)

石畳天井

網代天井にはこの網代を二枚重ねたり、竹を一緒に編み込んだものもあります。

竹張り天井(たけばりてんじょう)

竹張り天井

真竹や孟宗竹などの竹を割った割竹を天井に隙間なく張ったのが竹張り天井です。この節がある竹を縦に隙間なく張る方法を木賊張り(とくさばり)と呼び、精度が高いものだと熟練の職人でも1日数cmしか張れないそうです。

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天井にも手を抜かなかった昔の家

今の和室で見られるのは竿縁天井や目透かし天井が多いですね。竿縁や目地部分にたまるほこりを掃除機で吸い取るのも大変だろうと感じますが、網代天井や竹張り天井は繊細な意匠ゆえに管理が大変だったのではないかなと思います。

正直私は天井はバスルームしか磨いたことがありません。のっぺりとしたクロス張りの居室の天井を改めて見上げることもほぼありません。今のように忙しすぎない昔の人たちは天井も手抜きせずこだわってつくり、家を大事に天井のメンテナンスにも時間をかけていたのかもしれません。

この記事を書きながら日頃からパタパタと天井をはたく時間や心に余裕をもった昔の人々の姿がなんとなく浮かびました。首は痛そうだけれど天井をきれいにしたり美しい網代編みを寝転んで楽しんだり「上を向く」時間が少しでも多いのは何だかそれだけ良いことのように感じます。少なくとも下を向いて歩いたりスマホを見下ろしたりする時間の多い現代人よりは……。

<参考書籍・参考サイト>

中山章「知っておきたい住宅設計の基本 図解日本の住まい」建築資料研究社(2009)、川上幸生「古民家の調査と再築」一般社団法人住まい教育推進協会(2019)、住まいづくり研究所「天井」、小林へぎ板店「へぎ板のつくりかた」、京町屋改修用語集「木賊張りとは?(とくさばり)」

ネット通販のほか、古民家再生協会の公式ページからも購入できます
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