「古民家に漠然と興味はあるけれど、なかなか買う勇気はない」、「古民家に憧れるけど古い家はやっぱり心配……」。
家を買おうと思っている人の中にはこんな風に考えている人もいるかもしれません。確かに普通とは違う物件ですから心配になりますし、なにより大きな買い物だから失敗も怖いですよね。
でも、古民家暮らしは現代の家にはないメリットがたくさんあります。
古民家暮らしのいいところを具体的に見ながらデメリットについても考えていきましょう。
天然素材に囲まれ、持続可能な古民家
古民家カフェなどに行くと木に囲まれてその香りや空間そのものに癒されます。古民家は化学物質は使われず、木材や漆喰など望む形で天然素材に囲まれて暮らすことができます。
そして基本的にその土地で得られた木材を使用して建てられた地産地消の持続可能な家屋です。
環境にいいことはもちろん、その地で生まれ育った木だからこそ気候風土に順応して数百年と生き続けることができます。
例えばヒノキの強度は伐採して200年後に最強になり、そこから1000年もかけて強度が落ちていくほどです。
デメリット① リノベーションコストとその解決策
素材やにこだわると悩みになるのがそのコストです。古民家の中には農家や商家など現代の生活から考えると巨大なものがたくさんあります。
そのリノベーションと考えたら物件がいくら安く買えたとしても心配になりますよね。
それら古民家リノベーションのコスト問題を古民家再生の先輩たちがどのように対処してきたかまとめました。
- 一部分を取り壊して減築し、リノベーション対象を小さくする
- 実際に生活する場所だけ手を加えるなどリノベーションエリアを小さくする
- 実際に生活する場所を中心に少しずつ時間をかけて改修し、コスト分散させる
- できるだけ安い古材を手配してもらったり、米松など輸入木材も取り入れる
- 資格が不要な部分はDIYする(もちろん資格取得後DIYもあり)
リノベーションを最小限にするのは大きなコストカットになります。取り壊し費用を鑑みても安く済むそうで、取り壊した部分から古材を取り出して使うこともできます。
輸入木材も今ではよく活用され、米松は広く古民家再生に使われています。
最近はDIYされている人も多いですね。見ているともちろん伝統的な工法とはいきませんが、自分が好きなように作っていくのは楽しそうです。
また伝統工法にこだわりたい人でも資格や伝統技術が必要な部分は職人さんにお願いし、障子貼りやタイル貼り、塗装など自分でできるところは自分で楽しむという方法を実践している人もいます。
リノベーションに関しては国や自治体で補助金があります。素材だけではなくコストがかかるものは他にも色々でてくることでしょう。使えるものは上手に活用しましょう。
気候的にも、コミュニケーション的にも風通しが良き
日本家屋は暑さを基本に作られているため、農家にしても町屋にしても風通しが非常にいいことが特徴です。
建具を大きく開け放つことができたり、冬は障子のところを夏はすだれにしたり、そもそもとっぱらってしまったり。思っている以上に自由です。
また、縁側などに代表されるような開放的な空間は家族や外部の人とのコミュニケーションさえも風通し良くしてくれます。
物質的な豊かさより人は人とのつながりで幸福感が高まるそうなので重要なポイントといえるかもしれません。
デメリット② 古民家の寒さをどうするか
上述の通り、古民家は夏涼しい分冬はとてもとても寒いのです。すきま風も多く、奥に行けば行くほど暗い=日が当たらず、広さも高さもあれば尚のこと寒くなります。
古民家再生した家に住んでる先輩たちはこうやって乗り切っています。
- 間取りを工夫して一つ一つの部屋を小さめにする
- 日光が取り入れやすい設計にする
- 二重窓やペアサッシを設置し機密性を高める
- 断熱材を入れる
- 床暖房、セントラルヒーティング、薪ストーブを取り入れる
- 小さい古民家であれば石油ストーブとエアコンでいいことも
とにかく施工時にできるだけのことはやっておくことです。暖房だけでなく冷房の効き具合を考えても空間を小さくするというのは大事かもしれません。
いくら古民家が涼しいといえど最近は夏の暑さもとんでもないので寒暖の調整がしやすい工夫が必要です。
地震に強い!古民家の免震性
メディアが地震がある度に倒壊した木造住宅を映すからか、古民家も地震には弱いというイメージがある人もいるかもしれません。
確かに建てられたつくりや時期によって弱い木造家屋はあります。でも阪神大震災の時には中古住宅よりも伝統工法でしっかりと作られた状態のいい古民家の方が生き残っていたというデータもあるそうです。
1950年(昭和25年)に建築基準法が制定されると土台が鉄筋コンクリートの在来工法に変わっています。建築基準法は最初のうちは不十分な内容も多く、木造に関わらずその頃の中古住宅には伝統工法の古民家よりも弱い建物があります
ではどうして古民家が多く残ってくれたかというと石場建てという伝統工法による免震性の高さによるものです。
伝統構法では多くの古民家の土台が束石(つかいし・礎石の一つ)と呼ばれる石の上に柱を建てています。この時、石の形にぴったり木を削ってのせるため地震が来たときの揺れを逃すことができます。
新しい建物のように金具で地震に対抗する耐震ではなく、一緒に揺れる免震で被害を最小限にしています。
もちろん、物件を見つけたら購入前には伝統耐震診断や古民家鑑定、床下インスペクションなど様々な調査が可能です。
古民家は固定資産税が安い!
築年数によって変わる固定資産税。古い古民家は固定資産税も安くなります。資産価値が低いためですが、これはリノベーションをしても変わりません。
また、古材を使った新築も固定資産税が安くなる可能性があります。
注意点
リノベーションしても固定資産税が変わらないのは嬉しいですが、増築や移築をした場合は評価の見直しがされ、これが適用とならない場合もあるので注意です。建築士さんらとよく相談しましょう。
古民家は住まないともったいない
今回は古民家暮らしのメリットやデメリットについていくつか紹介しました。古民家を再生させて快適に暮らしている方たちはたくさんいます。
確かに新しく建てるよりも問題や壁に当たることは多いこともあるかもしれませんが、いつの間にかあっという間に建てられてしまう新築よりも設計士さんや大工さんたちと話し合って一緒につくる自分の家に愛着をもつ先輩たちが多いようです。
また、古材も貴重です。わざわざ全国から取り寄せて使いたい人がいるほど価値のあるものです。
柱一つとっても強度やあたたかみ、その家での歴史などみすみす解体されてしまうのは本当にもったいないことです。
色々書きましたが、とにかく気になる古民家を見つけたらまずは色んな人に話を聞いてみるのが一番です。
全国古民家再生協会や日本民家再生リサイクル協会など信頼できる組織に相談してみましょう。悪質なリノベーション業者を避け、伝統構法に詳しい工務店さんの紹介もしてくださいます。
残っている古民家は最近の新築のように工場材料でつくられているものではありません。柱一つとってもあなただけの唯一無二の木材であったりします。
免震性が高かったり、風通しが良かったり、寒さなどの古民家のデメリットでさえもリノベーションで自分好みにカバーしていくことを楽しんでみるのはいかがでしょうか!
家を買うなら絶対古民家!の古民会でも
色んなことを調べながら検討していきたいです!
その他の参考サイト・参考文献
ホームズ君よく分かる耐震「木造住宅耐震基準の変遷」、新潟住宅通信「「古民家」の暮らしやすさが知りたい!古民家リノベーションの不安&疑問をプロに聞いてみた」、じゃぱとら「古民家のメリットとデメリット」、梅江製作所「第40回 「木の強さと寿命」について」、一般社団法人全国古民家再生協会茨城第一支部「「光付け」という技術」、古民家再生・空き家活用 評判「古民家再生や空き家活用の固定資産税は?」、監修 清水康造・佐々木祐子『千秋萬歳自家自讃 古民家暮らし私流』飛鳥新社(2002)