古民家の専門家には古民家鑑定士や古材鑑定士、伝統再築士、伝統耐震診断士などさまざまな知識を持つスペシャリストがいます。
古民家も住宅の一つではありますが、その独特のつくりや資材などの特徴から普通の家とは違う専門的な知識が必要とされる時があります。
古民家で何か困ったときやアドバイスを受けたい時、どんな専門家に相談できるのかご紹介します。
木造住宅簡易鑑定士
古民家鑑定などの古民家再生総合調査を行う前にこの木造住宅簡易鑑定が行われることがあります。既存住宅の流通の活性化のために建物の状態を簡易的に調べるものです。
各地域のシルバー人材センターに所属する木造住宅簡易鑑定士が行い、新民家推進協会や古民家再生協会のインストラクターと連携して調査や評価をします。
簡易鑑定であることから以下のことに注意しましょう。
あくまで古民家のリユースを促進させるための調査・判断基準です
木造住宅簡易鑑定の費用と相談先
費用は1棟3万円(税抜・2022年3月時点)です。
古民家鑑定士
古民家鑑定士は内閣府認定 一般社団財団法人職業技能振興会が認定する資格です。
古民家鑑定士は、古民家や古い建物などの建物調査(ホームインスペクション)を行います。主に、民家や建築物を所有する人や不動産業者、古物商、保険会社などが、建物の評価や売却価格の決定、修繕計画の策定などに必要としています。
古民家鑑定士は、建物の専門知識だけでなく、地域の歴史や文化、風土や気候にも詳しいことが求められます。
主に不動産関連や工務店などの建築関連に携わっている人が同時に古民家鑑定士としても活躍している場合が多いです。
古民家再生総合調査の費用と相談先
費用は30万円50万円(税別、地域によって別途交通費が発生する場合あり※)。これには後述する床下インスペクションや伝統耐震性能評価も含まれます。
安くはないですが、安心とその後の活用可否がわかることはその家をどうするのか決めるのに非常に重要です。
※2023年4月より料金変更あり
古材鑑定士
古材鑑定士は一般社団法人住まい教育推進協会の認定資格です。
古材は主に古民家に使われている国産自然乾燥材を指します。古材鑑定士はその年代や種類、価値を評価したり家の骨組みを調査する専門家です。
古民家鑑定が建物全体の評価を行うのに対し、古材鑑定は骨組みである構造部分の評価のみを行います。
古民家の中には壁や屋根が朽ちていても、骨組みは立派に残っていることも多いため再活用できるか調査することは未来に残すためにもとても意味のあることです。
また、残念ながら解体と評価された場合でも、長い年月をかけて強靱化した価値ある古材として買取ってもらう査定をしてもらうことができます。
古材鑑定の費用と相談先
費用は1棟3万円(税別)で、下記サイトの電話番号から問い合わせができます。
また、古材を取り扱っている工務店を探して直接連絡することもできます。
伝統再築士
伝統再築士は一般社団法人住まい教育推進協会が認定する資格で、建築士の資格を持つ人に限ります。
古民家再生のための再築の設計を行います。特に1950年以前に建てられた古民家の場合、伝統構法のつくりであること多いですが、伝統構法については建築基準法にも記載がほとんどありません。
そのため建築士でも経験や知識なしに伝統構法の再築は非常に難しいことから、伝統構法の家を再築基準を満たした安全な家として提供するべく伝統再築士が育成されています。伝統構法の再活用には欠かせない存在だといえます。
伝統耐震診断士
伝統耐震診断士は一般社団法人伝統構法耐震評価機構が認定する資格で、建築士または伝統再築士の資格をもつ人に限り取得できます。
主に1950年以前に伝統構法で建てられた古民家には1981年に設けられた新耐震基準と同等の耐震性能を持たせる必要があります。そのための調査を行うのが伝統耐震診断士です。
伝統構法の家は決して地震に弱いわけではなく、その免震的なつくりはむしろ最近の木造住宅よりも強いとも考えられているため、その構造を活かしつつ現在の再築基準を満たすよう活用がされます。
伝統耐震診断の費用と相談先
古民家再生総合調査に含まれ、費用は30万円(税別、地域によって別途交通費が発生する場合あり)。これには前述の古民家鑑定と後述する床下インスペクションが含まれます。
気になった方は古民家再生協会の各支部へ相談してみてください。
古民家床下診断士
古民家床下診断士は、一般社団法人住まい教育推進協会が認定する資格です。
木材の腐朽やシロアリ被害など床下コンディションを確認します。床下自走式ロボットなどを用いて、安全に古民家の現状を調査します。
古民家鑑定や古材鑑定などとともに、伝統再築士や伝統耐震診断士が再築のための設計を行う上で床下インスペクションも非常に重要です。
また、再築後も年に1回など定期的な床下調査を行うことで、できるだけ化学薬品などを使わず床下の環境を健全に保持します。
古民家床下診断の費用と相談先
古民家再生総合調査に含まれ、費用は30万円(税別、地域によって別途交通費が発生する場合あり)。これには前述した古民家鑑定と伝統耐震性能評価も含まれます。
気になった方は古民家再生協会の各支部へ相談してみてください。
伝統的構法による木造建築物状況調査技術者
「伝統的構法による木造建築物状況調査技術者」は略して「伝木(でんもく)」とも呼ばれます。
現在、既存住宅(中古物件等)への消費者の不安を解消するために、売買するときにはインスペクション(家の調査)を行い、その結果を買主に対して説明することが宅地建物取引業法で定められています。
それができるのが、建築士かつ「既存住宅状況調査技術者資格者」です。
- 通常の中古住宅 → 建築士 かつ「既存住宅状況調査技術者資格者」
- 伝統構法の古民家 → 建築士 かつ「既存住宅状況調査技術者資格者」かつ「伝木」
ただし、1950年以前に建てられた伝統構法の古民家に特化したインスペクションを行えるのがこの「伝木」の資格のある人です。
中古住宅や古民家は十分活用できるものも多いけど、
日本は「古い家=問題あり」ってイメージが強いです
こういう人に見てもらえると安心して売買できるんだね!
費用は10万円(税抜)です。
古民家や空き家の相談は今後どんどん増えていく
古民家や空き家関連には、実はいろんな専門家がいることがわかったと思います。こういった専門家への相談は2023年3月に「空き家特別措置法」の改正があったため、今後さらに増えていくことが予想されます。
「空き家特別措置法」の改正とは管理が不十分な空き家等がある土地への固定資産税は優遇措置が受けられなくなる可能性があるというものです。
対策が必要な古民家も多くあるのではないかと思います。これを機にまずは「木造住宅簡易鑑定」だけでも早めに依頼することをおすすめします。
また、どうしても管理ができないという場合は【訳アリ物件買取PRO】など古い物件でも買取をしている業者さん等にも相談し、とにかく放っておかないようにしましょう。
<参考書籍・参考サイト>
川上幸生「古民家の調査と再築」一般社団法人住まい教育推進協会(2019)、一般社団法人住まい教育推進協会認定資格 古材鑑定士「古材鑑定士とは?」