日本建築の屋根は主に3種類。切妻造・寄棟造・入母屋造

屋根のサムネイル古民家の空間と部位
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雨が多い日本の家屋は屋根にも工夫があります。民家でよく用いられる屋根には切妻造(きりづまづくり)、寄棟造(よせむねづくり)、入母屋造(いりもやづくり)の3つがあります。

名称だけ見るとあまり馴染みがないものですが、形を見てみると意外とどれも目にしたことがあるはずです。

どの屋根の形もとにかく雨が流れ落ちやすいのが特徴ですが、建物を見た時にどこから見ても目につきやすい屋根は外観も大事です。日本家屋ならではの特徴やメンテナンスについても見てみましょう。

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日本の伝統的な屋根の特徴

古民家の町並み

日本家屋の屋根は耐水性、防湿性、断熱性など共通している特徴が主に4つあります。

  • どの屋根も2つ以上の勾配がある(勾配屋根)
  • 雨が早く流れ落ちやすい
  • ひさしが大きい
  • 建物の象徴になる

それぞれの屋根でどんな工夫があるのか見てみましょう!

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切妻造(きりづまづくり)

切妻造
切妻の古民家

切妻屋根とも呼ばれ、本を開いて逆さまにしたような形です。屋根の勾配面が2つあり、今でもよく見られるシンプルな屋根です。

屋根裏が広くなるため通気性がよく、雨漏りに強いのが特徴です。雨が落ちていきやすいのでよく雪が多い地域でも用いられています。比較的低コストで、最近では太陽光パネルも設置しやすいなどのメリットも出てきました。

ただし、風があたりやすく破風板が傷みやすいことから耐風性が低く、またデザインとしては個性が出にくい形状でもあります。

破風板(はふいた)

妻(建物上部の△部分)で、瓦などのすぐ下にある板。雨風を防ぎかつては装飾部分でもあった

古民家でよく見られる越屋根(こしやね)

腰屋根のイラスト
越屋根の古民家

越屋根は切妻の上に切妻が乗った構造になっており、比較的大きな建物で用いられています。小さな屋根部分は屋根舎と呼ばれ、囲炉裏の煙抜きなど換気や、暗くなりがちな古民家の奥でも採光することができます。ちょこんと小さな屋根が乗った外観はかわいらしいです。

屋根が二重になっていることで断熱性も高いですが、構造が複雑なため雨漏りしやすくメンテナンスコストが高くなりがちです。

寄棟造(よせむねづくり)

寄棟イラスト
寄棟の古民家

寄棟屋根とも呼ばれ、4方向に勾配がついています。棟に向かって4つの面が寄り集まっているため寄棟と呼ばれます。寄棟も今の住宅によく見られます。

棟(むね)

屋根の一番高い部分とその木材

面が4つになることで風に強いため、台風が多い地域や海のそばの地域でよく用いられてきました。またひさしが4つできることで壁を全方向の雨風から守ることができます。どっしりとして落ち着いた外観が特徴です。

ただし、屋根の一番高い部分の大棟に加えて他に4つの棟と棟の数が多いことで接続部分が増え雨漏りの原因になりやすくなります。また屋根裏が狭くなりがちなため換気が必要です。面が増えることでコストも増えます。

入母屋造(いりもやづくり)

入母屋のイラスト
入母屋の古民家

入母屋屋根とも呼ばれ、切妻と寄棟を合わせたような形です。かつては格式高い構造であったため、法隆寺をはじめ、日本各地のお城の天守閣でも使われていました。その後は民家でも取り入れられ、日本瓦がよく似合う日本家屋の代表的な形にもなっています。

切妻と寄棟の長所を併せ持ち、通気性・耐風性・断熱性のすべてをカバーしています。屋根が多いため、外壁の全てが守られ見た目にもがっしりとした美しさがあります。

ただし、入母屋造の最大のデメリットは屋根が多いことと瓦を多く使うことによる重さです。地震が起きた時などこの重さに耐えきれず倒壊している例もあります。また、構造が複雑なため雨漏りもしやすく、メンテナンスでも手がかかります。最近では修繕できる職人さんが減少している問題もあります。

一番お金がかかる古民家の屋根

大きな屋根をもつ古民家

古民家を見るとき家の外観や内装に目が行きがちなものの、再生やリノベーションが前提の古民家では実は屋根が一番お金がかかります。古民家に限らないことですが、屋根は非常にメンテナンスがかかる部位です。

確かに屋根のしめる面積だけを考えても家の床面積より大きい上、屋根を構成する骨組みの小屋組部分から屋根を覆う素材まで手をかけなければいけない部分はかなり多いです。古民家を手に入れた時の再生時だけではなく、100年以上住み続けるための定期的なメンテナンスコストは屋根にももちろんかかってきます。

家の大きさにもよりますが、屋根だけでそのコストなんと一度で200万〜400万ほどかかってくることも。でも雨漏りでもしたら大変なのであまりケチれません。

きれいに修復された古民家の屋根

その上、入母屋造のようにメンテナンスできる職人さんが減っていることなども考える必要があり、外観や内装だけではない形や大きさなど自分に合った長い付き合いができる屋根をもつ古民家との出会いが大切です。

悪いことばかり書いてしまったような最後になってしまいましたが、管理がしやすい切妻造の古民家は古来から昭和期まで多くあり、屋根を管理しやすいものに作り替える選択肢もあります。また伝統技術を受け継いでくれている若い職人さんたちもいますので、屋根も大事な要素の一つとしてしっかり専門家と相談することが大切です!

日本家屋の伝統木造技術を受け継ぎ担う人材を育成する国家プロジェクトのサイト

<参考書籍・参考サイト・写真イラスト提供>

宮元 健次『雑学3分間ビジュアル図解シリーズ 神社・寺院・茶室・民家 違いがわかる!日本の建築』株式会社PHP研究所(2010)、有限会社辻塗装店「知っておきたい屋根形状!代表的10種類の特徴と風土に合った選び方」、街の屋根やさん東京「あなたの屋根はどの形?18種類の屋根と名称をご紹介」、ユーコーナビ 日本最大の外壁塗装メディア「【写真付】屋根の形状12種類のメリット・デメリットを徹底解説!」、写真提供:photoAC、イラスト提供:イラストAC

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