古民家などの日本建築は、夏の気候に重きをおいてつくられています。大きな屋根から伸びる庇(ひさし)や軒が深いのは、夏の強い日差しをできるだけ遠ざけ、雨よけの役割があります。
また、内部と外部を繋げる空間をつくり出すものでもあり、古民家で安心感や落ち着きを感じられる理由のひとつかもしれません。
暑い夏、軒や庇のメリットを知ると、
一層古民家が魅力的に思える記事です……
軒や庇ってどの部分?
上の図からも分かるように、簡単にいうと、
- 軒:屋根の延長部分にある。家全体や外壁を守る
- 庇:窓や扉など開口部の上にある。室内へ直接日差しや雨が侵入するのを防ぐ
設置されている場所によって呼び方が変わり、守っている場所や役割も少し違います。
軒や庇があることのメリット
軒や庇があることのメリットを挙げてみます。
日差しや雨に関することが多いね
では、軒と庇はどうやって雨と強い日差しから守ってくれているのでしょうか?内部と外部をつなげる役割とは何でしょうか?
雨と汚れから家を守る
軒や庇は日本特有の気候が生み出したもので、大きな目的は雨よけです。
雨の多い日本の家は古くから「雨仕舞い(あめじまい)」とよばれる建物の表面や木の継ぎ目などに雨を防ぐ知恵がたくさんつまっています。
深くて低い軒や庇もその一つで、屋内を濡らさないだけでなく屋根から流れてくる雨のはね返りを少なくすることで、壁などの汚れを防いでいます。
雨の多い日本では雨対策がとても大事です
日差しを調節する
帽子のつばの役割と同じで、軒や庇は建物に直接当たる日差しを季節によって調節します。
屋根が大きい茅葺屋根は45度の勾配がつけられ、雨が落ちやすく大きな軒をつくって家を守っています。
建物の内部と外部をつなげる
内でもなく外でもない空間といえば縁側がありますが、その上に取り付けられているのが庇です。
庇の下は母屋よりも格下の場所と位置付けられていた時代もありましたが、近世(安土桃山〜明治時代)以降に庇の下に縁側が作られるようになり、内と外をつなぐ開放的な空間になっていきました。
縁側はあとで作られるようになったんだね
雨よけ庇の種類
窓や扉の上に取り付けられる庇以外にも、古民家には庇のような役割をするものがあります。
霧除け庇(きりよけびさし)
霧除け庇は開口部の上につける小さな屋根のことです。
小降りであれば雨の日でも窓を開けることができ、窓の上部が傷んでもそこからの雨漏りを防ぐ役割もあります。
庇自体を「霧除け」と呼ぶこともあります
水切り瓦(みずきりがわら)
四国に多い水切り瓦は、土蔵造の漆喰壁で見ることができます。
2〜3段ほど、庇のように壁に瓦をとりつけることで壁をつたう雨を断ち切り漆喰壁を長持ちさせていました。
他にも軒先に板を張った「うちおろし」と呼ばれる雨除けもあります
豊中市のHPに写真があります
あるとないじゃ全然違う軒や庇
我が家の近くに新築のおうちがあるのですが、今時のファッショナブルな四角いおうちです。
きれいな長方体で軒や庇はひとつもありません。外壁は真っ黒のガルバリウム鋼板です。ひたすらに太陽を全面で受け止めている感じです。
建てたご家族にとっては今年初めての夏、この記事を書いている今日の最高気温は37℃でした。
改めて軒や庇の良さを知るとそれらがあるだけでも全然暑さが違うだろうになと思ってしまいます。
どれだけエアコンを効かせなければならないのだろうなぁと、余計なお世話ですが見ていて少し心配になるおうちなのです……。