古民家鑑定士の公式テキストである「古民家の調査と再築」では築50年以上の木造家屋といった定義で解説がすすんでいます。
最近の古民家人気や需要もあり古民家の定義を調べている人も多いようなので改めてまとめてみました。どうして築50年以上となっているのか?その他の定義について解説します!
古民家について色々書いてきたけど、そういえば定義について
改めて書いたことってありませんでした。盲点。
「古民家」は民俗学で使われる用語
古民家は家なので、不動産関連や建築関連と結びつきが強いですが、「古民家」という言葉自体は建築基準法にもありません。
「古民家」は民俗学や日本建築史で定義されており、支配階級でない一般の庶民が住む古い建物すなわち古い民家ということで、おそらく多くの人がもつ古民家の認識だと思います。
ただし、民俗学では古い庶民の家というだけで築年数による区別はされていません。
庶民の伝統的な生活様式や社会、文化を伝承や歴史的な物証・できごとなどによって明らかにしようとする学問
古民家鑑定士のテキストによる古民家の定義
現在一般的に古民家を定義するものの一つとして築50年以上とされているのは、建築士や古民家鑑定士がそれを基準に勉強したり家をみたりすることがあるためかと思います。
その古民家鑑定士の公式テキストでは古民家を以下のように定義して解説されています。
本書では、国の「登録有形文化財制度」に合わせ、建築後50年以上を経過した建物で、かつ骨組みに木材を使用した木造軸組構法の「伝統構法」と呼ばれる建築基準法制定前に多く建築された住宅と、建築基準法制定後に一般的に建築される「在来工法」と呼ばれる住宅を古民家と定義する。
川上幸生「古民家の調査と再築」一般社団法人住まい教育推進協会(2019)40頁
なんか知らない言葉がたくさん出てきたわ
なんとなく分かってきたかも!
定義1:築50年以上を基礎とする理由は登録有形文化財制度
登録有形文化財制度で登録される文化財の基準は以下のようになっています。
文化庁「登録有形文化財登録基準」
平成8年8月30日文部省告示第152号改正 平成17年3月28日文部科学省告示第44号 建築物,土木構造物及びその他の工作物(重要文化財及び文化財保護法第182条第2項に規定する指定を地方公共団体が行っているものを除く。)のうち,原則として建設後50年を経過し,かつ,次の各号の一に該当するもの (1)国土の歴史的景観に寄与しているもの
(2)造形の規範となっているもの
(3)再現することが容易でないもの(下線は筆者による)
古民家は文化財として登録される基準を満たしていないこともあるものの、建築当時の庶民の生活や仕事が色濃く反映され、その土地の文化や気候によって独自の地域性をもつ貴重な建造物です。登録有形文化財と同じく価値あるものととして考えるべく築50年以上とされたものと思われます。
定義2:「伝統構法」と「在来工法」で建てられた木造民家
伝統構法も在来工法も木造軸組構造と呼ばれる木を骨組みにもつ建物のつくりです。
土台に柱や梁、貫や筋交を骨組みとして建てられる木造建築のつくり。対して同じ木造でもアメリカから持ち込まれたツーバイフォー工法は床や壁を枠組みに建てられるところで違いがある。
木が骨組みというと2×4(ツーバイフォー)工法がよく知られていますが、アメリカから導入された工法のため、50年経ってもここでは古民家には含まれません。
建てられた年や築年数が分かれば
伝統構法か在来工法かわかるんだね
伝統構法にも在来工法にもそれぞれ特徴があります。詳しく見てみるとおもしろいですよ!
結局、古民家の定義って?
古民家の定義についてまとめると、
「築50年以上が経った、柱や梁を骨組みとして建てられた木造民家」
となります。
じゃあこれ以外は古民家じゃないの?
そんなこともありません。今回は古民家鑑定士の教本で定義されている古民家の定義を紹介しました。
もちろん法律で決められているものではなく、これ以外のものは絶対に古民家と呼べないなんてこともないと思います。
あくまで古民家に出会った時や古民家物件を探す時、目安として頭の片隅においてご参考ください。STAY JAPANなどで予約できる民泊体験などすると伝統構法など古民家のつくりをまじまじと観察する機会にもなりますよ!