古民家にも使われる蔀戸や代表的な引き戸6種類

舞良戸古民家を知る
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引き戸は引き違いに開閉できることで、ドアのように開くスペースが要らないという実はかなり画期的な建具です。その誕生はなんと平安時代の書院造からでした。古民家でも見ないことはない引き戸ですが、平安時代と同じ種類の引き戸もよく使われています。

今回は引き戸以前からの蔀戸や妻戸、そして古民家でもよく見られる引き戸である鏡板戸、帯戸、舞良戸などの代表的な引き戸を紹介します。

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引き戸以前からの戸 蔀戸と妻戸

書院造以前の寝殿造の建物に設けられていたのは蔀戸と妻戸でした。

跳ね上げて開ける蔀戸(しとみど)

蔀戸のイラスト

蔀戸とは、水平に跳ね上げて開く戸です。柱と柱の間に立て付けられ、木格子に板(吊り戸)が貼り付けられていました。採光したい場合はその吊り戸部分を上に上げて金具で留めます。古民家や神社仏閣などでなんとなく見たことがある人もいるのではないでしょうか。

蔀戸はかなり開閉が面倒で一旦開け放ってしまうと雨風が防げませんでした。引き戸が誕生してからというもの蔀戸は減少していったようですが、江戸時代には町屋でも使われていました。通りから商品や職人の作業が見えるように蔀戸を設置し開放していたようです。

蔀戸には小さな扉が付いていて、吊り戸を閉めた後もそこから出入りができるようになっていました。

妻戸(つまど)

妻戸

妻戸はいわゆる観音開きのドアです。妻は「建物の端」という意味ですのでそこにある両開きの扉を妻戸と呼びました。

この両開きの戸は中国由来のもので飛鳥時代からあったそうですが、前述の蔀戸は日本固有の扉です。ただし、蔀戸は開け閉めが大仕事のため夜に蔀戸が閉まっても出入りができるように妻戸が設けられました。大きな古民家や土蔵造の民家でもみることがあります。

妻(つま)

建物の端(つま)は配偶者の妻の語源にもなっています。昔は妻がいつも家の端にいたからなんですね

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引き戸の誕生

板戸
佐賀のVegeキッチン塩田津の230年経つ引き戸

蔀戸や妻戸も良いけれど、もっと開け閉めしやすい建具をと求められ平安時代に書院造の戸として始まったのが私たちにも馴染みのある引き戸です。

上に鴨居、下に敷居を設置しそこに板戸をはめ入れて横にスライドさせます。蔀戸や妻戸のように開けるか閉めるかのどっちかだけではなく、好きな幅で開け放ったままにしておくことができます。妻戸のように扉を開けるためのスペースも必要ありません。

これらの利便性は戸だけでなく、障子や襖などの室内の間仕切りにも使われるようになりました。今まで何気なく開け閉めしていた引き戸、確かにとても便利です!

引き戸の種類

引き戸の種類は戸板の構造や種類、材料によって様々あります。

鏡板戸(かがみいたど)

枠に板を張っただけの戸が鏡板戸です。鏡戸とも言われ、まっさら平面の鏡に似ているので鏡板戸といいます。

一枚板で作られ杉の一枚板のものは杉戸といいます。また本来は一枚板ですが数枚の板を並べて作られることもあります。シンプルですが重厚感があり、部屋の大きな面積を占めるので存在感が出ます。光は遮断されることになりますが、雨戸でもよく使われています。

帯戸(おびど)

名前の通り、真ん中に帯のように桟(横木)が入っているのが帯戸です。戸の強度を高めるためにデザインされ鏡板戸より更に頑丈な印象があります。

江戸時代以後の一般の民家で多く使われたそうですが、鏡板戸も帯戸も民家の中でも裕福な家でしか使われないものでした。帯部分が障子や組子・ガラスになっているものなどとにかくデザインが豊富なのが帯戸です。

舞良戸(まいらど)・遣戸(やりど)

框の間に板を入れ、舞良子(まいらこ)という細い桟(横木)を等間隔に何本も入れて強度を強くしている戸です。桟は横に取り付けられることが多いですが、縦につけられているものもあります。

玄関やお手洗い、下駄箱の戸など幅広く用いられます。

格子戸(こうしど)

格子戸

格子状に組子がはめ込まれた引き戸で、町屋などでは組子のデザインによって職業がわかるようになっていました。格子のデザインは50種類にも及びます。

格子についてはこちらで詳しく!

鎧戸(よろいど)

鎧戸

鎧板と呼ばれる横板を掛け重ねて作られる戸です。視線や光は遮られますが、板を重ねる分隙間が開くためそこから風や音は通すことができます。同じ作りの壁を鎧壁といいます。

現在でもドアや壁によく見られます。

簾戸(すど)

簾戸

框に縦横に桟を組み、その中に竹や葦を入れる涼しい引き戸もありました。ちょうど障子の紙部分に竹や葦が貼られるようなイメージです。

耐久性が低いのかあまり古民家でも見かけたことがありませんが、夏になると他の板戸などから簾戸に入れ替えられていたようです。

引き戸は明治になるとガラス戸などレトロで可愛らしいデザインも出てきます。古民家再生やDIYリノベーションをお考えならフリマアプリや各地の蚤の市、古道具屋さんで販売もされています。建具マニアもいるくらい種類も豊富なので、一度ご覧になってみてください!

<参考書籍・参考サイト・イラスト提供・写真提供>

宮元 健次『雑学3分間ビジュアル図解シリーズ 神社・寺院・茶室・民家 違いがわかる!日本の建築』株式会社PHP研究所(2010)、WOODONE「第10回 いまや知る人も少なくなった扉・・・・・・蔀戸(しとみど)」、北道倶楽部「寝殿造 1.2.2 外壁2・妻戸、舞良戸」、イラスト提供:illustAC、写真提供:photoAC

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