古民家と言ってもどんな種類があったのか、今回は中でも多く現存している田の字の間取りと町家のつくりについて見ていきます。
一般的に古民家は築約50年以上が経っていれば古民家となります。これは国の登録有形文化財の認定基準が築50年以上とされているため古民家もそれに合わせているそうです。
登録有形文化財の登録対象は江戸時代のものからなので、古民家も江戸時代から昭和の木造民家となってきます。
江戸から昭和の民家のかたちはどんなものだったのでしょうか。
田園地帯に特に多く見られた田の字の間取り

日本で多く見られるのは土間部分と居室部分の2つの空間からなる田の字作りの間取りがある民家です。
お店などではすでにリノベーションがされていて、なかなかこのままの間取りを見ることはできないかもしれませんが、柱や梁などのほぞ穴から想像できるところもあります。
それぞれの空間について見ていきましょう。
土間空間

土間はその家が生業としている作業場や簡単な来客対応の場でもありました。土間は土・石灰・にがり・水を加えて作った三和土(たたき)、漆喰塗り、砂利敷きなどさまざま。現代ではコンクリートやタイル貼りでおしゃれにしたものもあります。
- 室内なのに土足→保温性や調湿性があり、冬暖かく夏涼しい
- 炊事や煮炊きをする竈(かまど)や囲炉裏がある→水で濡れても腐らず、火事にもなりにくい
- 馬などの家畜が休む厩(うまや)がある
- 縄をなったり農具や漁具の手入れなど行う
田の字型の空間

一つの空間を襖や障子で隔て4つの部屋を設けた「田の字型」の間取りは田園地帯で特に多く見られたようです。
冠婚葬祭や人が多く集まるときは襖を取り外して1つの大きな空間として使用できます。田の字型は家の中央に等間隔に柱を立てたため、このような間取りになりやすかったようです。
田の字に区切られた4つの部屋は大体の役割が決まっています。
- でい:入口のすぐ横にあり居間の役割。通常の来客対応もここで行う
- だいどこ:食事をしたり一家団欒の場
- おくのま(おもて):最も格式が高く、格上の来客対応や儀式を執り行う
- なんど:寝室
他にも縁側でも縄をなったり機織りをしたり、屋根裏で蚕を飼うなど家の生業に合わせた住居のつくりになっています。
また、特に農村地帯では地域性が強く茅葺や杉皮、瓦などの屋根材や壁材などもそれぞれ特徴が見られます。
店舗併用の町家

現存している町家のほとんどは明治から大正時代のものと言われています。都市部に見られる間口が狭く、奥行きが長く、家の裏まで風が吹き抜けるようなつくりが特徴です。
よく「うなぎの寝床」と称されるのはその細長い形からでした。
町家の特徴である間口が狭い理由は、この間口の幅によって税額が変わっていたからです。広ければ広いほどたくさん支払う必要がありました。
また、狭い間口のお店がたくさん連なることによって通りを活気で満たす意味もありました。
町家の基本構造
町家も種類は色々ありますが、一番典型的な町家のかたちは「中二階」と言われ、商いエリアと居住エリアがつながっているものです。

道路に面した表がお店、裏の方に住まいや蔵、坪庭などがありました。それぞれの空間の特徴を見てみましょう。
- 格子:目隠しや通風できる。格子の種類で何の業種か分かる
- 見世:店舗 兼 商品を作る作業場
- 中の間:客を通す居室
- 台所:食事する部屋
- 奥の間:一番奥にあり、格式高い座敷
- 坪庭:家の中に造られる庭。坪庭があることで、家の奥でも光や風が通る。
- 通り庭:入り口から奥まで通る土間。土足で荷物や人が行き来する。通り土間。風の通り道。おくどさんは今の台所のこと
見世は時代劇などでもよく見かけますね。奥の間には床の間があり、大事なお客さまをもてなす部屋であったことからセンスが問われる部屋でもあったようです。

坪庭は採光と通風の意味で欠かせないものです。坪庭がなく、入り口だけでは奥は真っ暗で夏場は暑くてかなわなかったはずです。
風のない日でも坪庭に打ち水することで気圧の高低差を生み出し風を起こすことができます。一坪ほどしかないところもあるそうですが、それでももちろん、視覚的な美しさもありました。
庄屋屋敷や舟屋など他にも古民家のかたちはさまざま
古民家は他にも色んな形で残っています。
農家でも屋根の上に屋根がある養蚕農家の家、農村の仕切り役だった庄屋の庄屋屋敷、公家の住まいから始まった武家屋敷、商家、海辺につくられた舟屋など。
時代が進むにつれ、農家と町家が融合したような民家や洋館風の民家も増えてくる他、元々あった古い民家もどんどん増築や改築を重ねそこに住む人々と一緒に変化しながら生きてきました。
今古民家を現代人が暮らしやすいように移築やリノベーションをするのもその一つですね。古民会で訪れているようなお店も民家ではなくなったところが多いですが、新しい古民家のかたちです。

また、豪雪地域の合掌造りや暑さ厳しい沖縄の古民家はまた全く違った特徴や面白さがあるようです。機会があればぜひ行ってみたいですね。
古民家は寒い
土間の説明を書きながら思ったのですが、「冬暖かい」か?と疑問です。
もちろん、コンクリートよりは三和土が多少暖かいのでしょう。土間だけではなく、囲炉裏や庇、縁側などでも暖かさを取り入れる工夫がされているのですが、でも古民家といえば古い、汚い、そして寒い。それもかなり寒い。
これは古いから寒いを別にしても、そもそも日本家屋は夏を基準に作られているためです。古民家再生やリノベーションの本などを読んでいると、施主さんたちは床暖房を入れたり薪ストーブを設置したりと、とにかく寒さ対策に一生懸命です。
家の作りやうは、夏をむねとすべし。冬は、いかなる所にも住まる。暑き比わろき住居は、堪へ難き事なり。
吉田兼好『徒然草』第55段
徒然草で有名な吉田兼好は家は夏涼しく過ごせるように建てて、冬寒いのはどうとでもなるから我慢しなさいと言っています。本気?と思いますが、つい一昔前までこれが定説だったのだそうです。
日本の木造建築は世界最古の法隆寺もあったり海外からの評価は高いのですが、民家に関しては気候風土に適応できていない、と評されることもあるようです。
文明が発達して温度調節が当たり前の今、昔の人のように我慢強くないからなのか、私はもう少し寒さ対策をあきらめずに頑張っても良かったのではないですかと恐れながら先人に申し上げたい気もします。昔の人が病気になりやすかった理由には寒さもあるのではないかなと思ったり。
そんな寒さを耐えてきた人々の暮らしの工夫と、おそらく現在と比較にならないような春の暖かさへの喜びを想像しながらまた古民家を見てみたいなと思うのでした。
<参考書籍>
川上 幸生『古民家の雑学53』Amazon.com(2013)、宮元 健次『雑学3分間ビジュアル図解シリーズ 神社・寺院・茶室・民家 違いがわかる!日本の建築』株式会社PHP研究所(2010)







