伝統的建造物群保存地区に指定されることもある昔ながらの町並みは、歴史やその土地で盛んだった職業によって形づくられています。城下町や宿場町から在郷町などどうやってつくられていったか知ることで、その町ごとの特徴ある風景を一層楽しむことができますよ!
ここではそんな昔の町並みを8つ紹介します。
とりあえず伝建地区に行けば古民家にも会えます
武士が暮らしただけじゃない 城下町
城下町は城を中心に計画的につくられた町です。武家、商人や職人などの家が集まった集合都市といえます。
城下町は戦国時代から江戸時代に全国各地につくられました。城を取り巻く形で城に近い方に身分の高い武家(武家屋敷)を配置し、「武家町」となります。さらに武家町の中にも小さな町が出来上がっていきました。
身分や職業にちなんだ町割り(地域区分)がされ町名がついており、全国各地でその名前が残っています。町名を確認しつつ城を中心に頭の中で町割りマップを作りながら歩いてみると楽しいです!
袋小路ってまんま時代劇のイメージ!
町家が並ぶ 商家町
商家町は商人たちが暮らしていた町で、近代にかけて商業を中心に繁栄しました。いわゆる町家が並ぶような町ですね。江戸後期から明治初期にかけてつくられました。
その土地や近くで作られたものを集め、他の地域と交易することで発展しています。そのため街道が交わるところ、川沿いや運河沿いにあることが多いのが特徴です。
農村流通の町 在郷町(ざいごうまち)
在郷町は周辺の農村・山村でとれた農産物や材木、またそれらを加工した商品などを各地に流通させるための中心となった町です。在町(ざいまち)、郷町(ごうまち)、在方町(ざいかたまち)とも呼ばれます。
商家町と同じく、交通の要所となるような場所で発展し、農村の中でも小都市的な存在になっています。今でいう地方都市のように発展し、庶民が住む下町となったところもあります。
交通の要所 宿場町
江戸日本橋を始めとして五街道とその周辺の街道沿いで発展したのが宿場町です。宿場町は旅人の宿泊、飲食や馬を変える場所としても重要で、参勤交代では各地の大名や家臣が宿泊や休憩をした町でもあります。
明治以降、鉄道が通ったことにより宿場町が使われることはなくなったものの、今でも多くの宿場町が観光名所として残っています。
寺社を中心とした 門前町・寺内町(じないまち)
今より信仰心の高かった頃だったからこそ形成された町が門前町と寺内町です。
社寺の周辺で栄えた 門前町
門前町は中世以降に神社やお寺の周囲で発展し、参詣客で賑わいました。神社や寺院の門の前にある町です。当時の経済力の強かった神社やお寺により町は保護され、城下町ができるまで主要な都市や大きな町といえば門前町を指しました。
信仰や寺社の力が弱まった後も、行楽として訪れる人が増え商店や宿、茶屋、みやげ店が並び今も賑わっているところも多くあります。
明治初期の神仏分離や廃仏毀釈で
きれいに残っている門前町はすごく少ないそうです
境内に作られた町 寺内町
主に一向宗(浄土真宗)の寺や信徒によって、寺の境内に作られた町・自治都市です。中世末期から戦国時代にかけて形成され、中には非常に強い力をもつ町もあったようです。
また、神職や神社に奉仕する社家(しゃけ)が集まる町は社家町と呼ばれます。
町人文化がうまれた 茶屋町
江戸時代の都市文化の象徴であり、町人文化や娯楽が生まれたのが茶屋町です。
お茶屋はその名の通りお茶を出す店でしたが、もともと禅寺で施されていたお茶が門前町で茶屋の営業につながったと言われます。
近世に入ると、料理を出す店や出会いの場、待ち合わせや会合の待合茶屋となったり、幕末には志士が集まる政争の場ともなりました。
輸送の中心 港町・川湊町
日本は山が多いため、昔は陸地でものや人を運搬するのが困難でした。そのため輸送の中心は川、海をいく船舶が中心となり、多くの港町が各地にできました。
西日本では瀬戸内海、近畿地方では琵琶湖などが知られ、沿岸には港町と共に問屋や問丸(といまる・物資の運送・保管・販売を行なった業者)が活躍しました。
近代に入ると横浜や神戸などが大きな港湾都市となり、鉄道が発達したり船の大型化によって各地の小さな港町は衰退しましたが今も昔懐かしい風情が残っています。
産業の町 製蝋町・高山町・養蚕町など
その土地で豊富にとれた資源や産物によって発展した町です。豊かな資源を採取する人やそれをもとに匠の製品づくりをする職人、流通させる商人らが集まってできました。
江戸中期以降、幕府や大名らの財源のため領内の特定の町に商品の扱いを独占させて税を徴収しました。そのためこれらの町では商人の中に権力者と結びついて利益を増やした者もおり人々にとってフェアでなかったこともありました。
専売品となった紙・蝋・塩・藍・漆・鉱山物などがあり、これらが採れる町がそのまま町名となっています。
日本の原風景 農村・山村・漁村
農業や林業、漁業を生業とした人々で作られた町や集落です。日本人にとって故郷でなくともどこか懐かしさを感じる風景が広がっています。
地域の気候や地形などの自然条件、その土地で栄えた職業や特産物によって様々な地域性を持つのが日本の農村・山村・漁村にみられる集落の特徴です。
今では空き家となるところも多いものも、そういった伝統的な集落を守うとする取り組みも進み、地域ぐるみや自治体で動いている地域も多くあります。