結婚式や入学式などお祝いの日などに「晴れの舞台」と表現することがありますが、この「ハレ」は実は晴々しいという意味ではなく「非日常」を表しています。
「ハレ」と対になる言葉が「ケ」で、こちらが「日常」です。
「ハレ」と「ケ」の考え方は古民家の間取りとも深く関係しています。
実は日本人に染み付いている「ハレ」と「ケ」
ハレとケの概念は、時間論をともなう日本に独特の伝統的な考え方で民俗学者の柳田國男によって見出されたものです。民俗学のほかにも文化人類学でも研究されてきました。
現在はかなり意識が薄れているものもありますが、昔の人々は衣食住や言葉、振る舞いなどをハレとケ、日常と非日常で区別していたのです。
非日常をあらわす「ハレ」
ハレは「晴れ」・「霽れ」と書かれ、一般的におめでたいイメージがありますが、前述の通り非日常を表すものです。
主に冠婚葬祭を表すことが多いです。
非日常の意味では
お葬式もハレの日ってことになるんだね
非日常の場では正装で参加しなければなりませんが、基本となるのは白と黒の正装です。たとえば白は「清め」の色といわれています。
かつての日本人女性は婚礼で着た白無垢を、夫を亡くした時には袖をつめて喪服とし、最後は自分の死装束としました。
人生という時間のなかでハレの日に着るものとしていたのですね。
日常をあらわす「ケ」
ケとだけ言ってしまうと、もはや昨今の日本人にもピンときません。「褻」とも書かれ、普段の生活をあらわします。
普段のあらゆることにケがついております
ケはケガレ・毛枯れにも通じ、作物が枯れるなどの日常が破られる不穏な言葉でもありました。
古民家の間取りと「ハレ」と「ケ」
ハレとケの考え方はそれだけ生活に根付いていたもののため、当然住む家にも反映されています。
玄関のある方がお客さまを迎えるハレの空間、奥に生活の場であるケの空間となっています。
家の格をあらわす大黒柱は家の中心かつ客人にも見えるハレの空間にあることが多いようです。
ハレの空間にある部屋
上の図はごく一般的な人々の家で簡易な間取りですが、もっと裕福な農家や庄屋になると部屋はたくさんありました。
ハレの空間にある部屋の例とその役割をいくつか挙げておきます。
玄関 | お客様専用で、家の者は基本的に使わない |
土間 | 家業の作業場であるものの、簡易な来客対応も行われた |
帳場 | お金の勘定ややり取り、帳簿付けをする部屋 |
神前の間 | 祭壇を置き、神様を祀る部屋 |
控えの間 | 客人を待たせる間、もてなす部屋 |
表座敷 | 床の間や床脇、書院が備え付けられる応接の間 |
どれも外部の人と接するパブリックなお部屋だね
ケの空間にある部屋
ケの空間にある部屋の例とその役割もいくつか挙げてみます。これらはすべて家の奥の客人は通らないところにありました。
台所 | 家の物が食事する部屋 |
居間 | 家族がだんらんする部屋 |
仏間 | 仏壇や位牌、仏像を安置する部屋 |
お産部屋 | 出産や子育てに使われる |
納戸(ナンド) | 寝室 |
女中部屋 | 住み込みの女中の部屋 |
プライベート空間です
古民家リノベーションと「ハレ」と「ケ」
お客さま優先で作られたのが古民家の特徴ですが、現代の私たちにはプライバシーが保たれていることもとても重要です。
それでもせっかく古民家を選んだのであれば、人が集まる空間をつくってみてもいいかもしれません。
ハレとケの間取りを参考にして、お客様の動線を考えつつプライベートもしっかりと守れる古民家リノベーションもぜひ検討してみてください!
<参考書籍・参考サイト>
川上幸生「古民家の調査と再築」一般社団法人住まい教育推進協会(2019)、コトバンク「帳付」、株式会社唐箕屋本店「神前の間改装工事[二段違い祭壇]」