旧街道などを歩いていると狭い間口の古民家に会うことができます「町家っぽいなぁ」、「長屋だなぁ」とは思うもののその違いについてはご存じですか?
端的にいうと、長屋は複数の住居が1つの建物の中にあり、町家はそれぞれの住居が独立している形式です。どちらも都市部でよく見られます。
長屋や町家はなんと平安時代(794年〜)の職人や町人によって建てられ始めました。古民家という点でいうと昭和25(1950)年頃までに建てられたものとなりますので実に1000年以上の歴史があります。
それでは長屋と町家の共通点や他にどんな違いがあるのか見てみましょう!
長屋と町家の共通点
ぱっと見ただけでは区別がつかないこともある長屋と町家は共通点が多いからかもしれません。いくつか挙げてみます。どちらも……
- 商売をするための建物
- 道路に向かって平入のつくりになっていることが多い
- 間口が狭く、奥に細長く造られる
- 片方に通り土間、もう片方に部屋が並ぶ
どちらも物を売るお店であるため格子が並んでいたり、二階部分にある虫籠窓(むしこまど)と呼ばれる虫かごのような小さな窓などの見た目は同じです。
狭い間口や入口が平入という玄関の方向も同じため、長屋も町家も同じような外観が並ぶことになります。
上図は家の入口説明イラストのため幅広の家になっていますが、都市部の町家や長屋は入口が雨に濡れないよう軒先に広くひさしが突き出る平入の建物が多くなっています。
玄関に入って、一方が家の奥まで繋がっている通り土間、もう一方に部屋が縦に並ぶようなつくりになっているのも長屋と町家に共通しています。
次は長屋と町家のそれぞれの特徴について見てみます。
現在の集合住宅にも通じる長屋の特徴
長屋は1つの建物の中に複数の住居が入っている、いわゆる集合住宅です。壁でのみ仕切られており平屋だけでなく二階があることもあります。二階がある長屋は今でいうメゾネット(二重構造)ですね。
また長屋で商売をしていることもありますが、住居としての長屋の場合は裏通りに面しています。住居の場合は部屋数も大体2部屋ほどで多くありません。
長屋の問題は今の集合住宅と変わらず騒音です。壁で隔てられただけの長屋、集合住宅暮らしの私には急に親近感を感じます。
ただし、長屋と今の集合住宅との違いもあります。今の集合住宅が玄関ロビーや階段を共有しがちであることに対して、長屋は自分の家の玄関を出ればすぐに外です。今の集合住宅よりも独立性は高い物でした。
長屋といえば時代劇などでは人々が井戸端会議などやっている風景が描かれたりしています。同じ長屋の者同士でお醤油の貸し借りをしたり、子供の面倒を見合ったり温かいつながりがありました。
ただし、京町長屋ではこれに限らずお互い一切関わらないという淡白な長屋もあったようで、その地域性もまたおもしろいですね。
町家(まちや・ちょうか)・商家
町家は「まちや」「ちょうか」どちらの読みでも大丈夫です。町家という呼び名は農家に対して商業や工業を商うという意味の総称です。
町家はそれぞれの屋根をもち独立して建てられた主に都市部の建物です。町家は商売を行うため表通りに面しています。下記が一般的な町家の間取りです。
町家は隣同士と壁の共有はないものの建物同士が非常に近いです。また長屋に比べて部屋数が多いため奥行きも長くなりがちです。
そのため採光や風通しのための坪庭が設けられているのが特徴です。坪庭は家の奥や中央に配置されました。
また、商家も町家の一つです。文字通り商人の家であり、特に店舗兼住宅の建物を指します。
昔の長屋・町家と現在
長屋や町家の業種は糸屋、炭屋、米屋、旅籠など様々でお店によっては創業200年以上など現在も続いているお店もあります。
長屋や町家は日本全国に残っており、再生された建物は古民家カフェや民泊などの観光資源となっているところもあります。田の字の農村古民家と違うところは比較的小さな建物も多いところです。
昔の人々が都市部で小さな空間をどのように使っていたのか想像しながら見てみるとまたきっと見どころがたくさん出てくるはずです!
<参考書籍・参考サイト・写真提供>
川上 幸生『古民家の雑学53』Amazon.com(2013)、マイベストプロ大阪「町家建築の特徴は間口が狭く、奥に長いこと。」、オルタナティブ投資の大学「町家と長屋の魅力と違い!テラスハウスも長屋の一つだった?」、KEnoHARE「日本の文化”町家”の魅力を再発見!町家・町家の違いや、代表的なエリアは?」、HISTORIST「町屋(まちや)」、一部写真提供:photoAC