古民家でも用いられている在来工法ってなに?

在来工法古民家を知る
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在来工法は伝統構法と同じく柱と梁で骨組みを構成する木造住宅の建て方ですが、伝統構法と違うのは天然素材に限らず基礎がコンクリートであったり金物も使われます。また、筋交や火打ちと呼ばれる斜めに取り付ける部材があるのも特徴です。

現在の柱と梁の骨組みで建てられる木造住宅は在来工法で作られるものが99%です。建築から50年経ったものが古民家とすると在来工法で作られている古民家もたくさんあります。

今回はそんな在来工法の特徴についてみていきます!

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在来工法の特徴

模型

在来工法は伝統構法から派生した木造軸組構法の一つで、1950年に制定された建設基準法から普及していった工法です建設物に対して本格的な法規制がされるようになったのは1923(大正12)年の関東大震災以後でどうにか地震被害を少なくしようとしたことがきっかけの一つでした。

木造軸組構造(もくぞうじくぐみこうぞう)

土台に柱や梁、貫や筋交を骨組みとして建てられる木造建築のつくり。対して同じ木造でもアメリカから持ち込まれたツーバイフォー工法は床や壁を枠組みに建てられるところで違いがある。

特に1981(昭和56)年以降に建設された新耐震基準を満たした建物は耐震に関して一定の安全水準に達していると言われています。

古民家に多い伝統構法についてはこちら

在来工法のつくりの特徴

柔軟に地震の揺れを吸収する免震の伝統構法と違い、強固に地震に耐ようとする在来工法はどんなつくりになっているのでしょうか。

在来工法のつくり
  • コンクリート布基礎とアンカーボルト
  • 筋交・火打などの斜材の使用
  • 接合部に金物を使って補強するため伝統構法より小さな部材にすることができる
  • 大黒柱ではなく1階から2階まで届く長い通し柱を立てる

コンクリート布基礎とアンカーボルト

伝統構法が礎石の上に柱を直接立ててあるのに対して、在来工法はコンクリートの基礎の上に横木を敷いて土台とします。この土台をコンクリートに埋め込んであるアンカーボルトで固定し、その上に柱が立てられます。

通し柱は家のコーナーに1階から2階まで通されますが、このコンクリートに埋め込んだ金物に取り付けられるため地震の際は柱が抜けるのを避けることができます。

筋交(すじかい)・火打(ひうち)などの斜材と金物の使用

伝統構法は柱や梁などの直線材を垂直・水平に使うのみですが、在来工法では斜めに設置する筋交や火打といった斜材も使われます。

筋交い
クロスして使われている筋交

筋交は縦方向に柱と柱の間に斜めにいれて建物の構造を補強します。1本だけ入れられることもあれば、2本入れられることもあります。古くは法隆寺でも採用されているようです。

火打

火打は梁や桁・土台のコーナーに水平方向に取り付けられる補強材です。火打梁や火打土台とも呼ばれます。

これらの接合部分には金具で緊結する(しっかり締めたり打ち付ける)ことが義務付けられています。伝統構法では太くて大きな柱や梁を何本も階層的に重ねて建物を強くしていましたが、在来工法は斜材や金具を使ってがっちりと固めるため、大きな部材は使われなくなっています。

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在来工法のメリット・デメリット

古民家では伝統構法と比較されることの多い在来工法ですが、どんなメリットとデメリットがあるのか紹介します。

在来工法のメリット

木造住宅

自由度の高さやコスト面で伝統構法にこだわらず古民家を探している人にはいい物件が見つかることもあるでしょう。

  • 設計の自由度が高く、変形した土地や斜面、狭い土地にも建てられ、リフォームや増築もしやすい
  • 鉄筋コンクリートや鉄骨の家に比べて低コストで建設でき、中古を購入時も比較的安価
  • 金具等で補強するため部材が小さくて済む
  • 1981年以降に建てられたものは一定の耐震基準を満たしている
  • 現在のライフスタイルに合っており、プライバシーも守られた間取り

伝統構法の家は現在の家と比べると巨大な家も多いですが、在来工法の家は小さいものも多くアルミサッシや断熱材も入れられることで気密性も高いものとなっています。暖かく個人を尊重した間取りのため古民家であっても比較的すぐに馴染みやすい家のつくりです。

比較的新しいものであれば建設時の書類が残っていること場合もありリフォームなどの際に参考にできることもあります。また、1981年以降に建てられた物件であれば新耐震基準を満たしているため、購入時の一定の安心材料となることもあります。

在来工法のデメリット

空き家

伝統構法と比較されがちな在来工法のデメリットです。

  • 建築基準法で規定されいる金具等の強度であっても想定外の地震には免震の伝統構法のような粘り強さは発揮できず弾けとんでしまう
  • 1981年以前に建設されたものは新耐震基準を満たしていないおそれがある
  • 平均寿命が30年ほどと短い
  • 物件によって状態の良し悪しの格差が大きい
  • 金物や接着剤を使うため、部材の再活用はしにくい

免震を重視した伝統構法は地震の揺れに対してもその柔軟性で各部が倒壊を防ごうとしますが、耐震重視の剛のつくりの在来工法はある一定の限界を超えると金具が外れた途端に支えるものを失い崩れてしまう可能性があります。

また在来工法が普及し始めたのは1950年以降ですが、1981年の新耐震基準が設定されるまでの31年の間に建てられた古民家は耐震性に不安が残ります。そのためリフォームや古民家再生の際は地震対策のコストが多くかかることになります。

コスト

木造住宅に限らず、日本の住宅は世界的に見ても圧倒的に寿命が短いです。アメリカ103年、イギリス141年であるのに対して日本はわずか30年です。ローンを払い終わる頃には使わなくなっている家がびっくりするほど多いのです。(平均寿命は正確にはサイクル年数と呼ばれ、家の現存数を増加数で割ったもので算出されます。)

これは築年数が経つと価値がないという認識が広まってしまっている日本では、古いからメンテナンスにお金をかけても意味がないと考えてしまうところがあります。それが中古物件にはコンディションの良し悪しにかなり差がある理由の一つとも言えるでしょう。

在来工法と伝統構法、結局どっちがいいの?

どちらにもメリットもデメリットあるため一概には言うことはできませんが、最終的には自分のライフスタイルに合う方となりそうです。

確かに地震対策や耐久性、古材の価値などは伝統構法に分があるところが多いように思いますが、昔ながらの日本の木造のつくりで建てられている民家は今や99%が在来工法です。これから在来工法の古民家が増えていくことを考えると、伝統構法の家と同じく上手に活用していくことが求められそうです。

スクラップ アンド ビルドから循環型社会へ

ステンドグラスの照明

恐ろしいほど低い日本の住宅の平均寿命ですが、世界最古の木造建築物を建てた技術があったにもかかわらずどうしてこんなことにと驚くほかありません。これは戦後の日本の経済成長の中で建てては壊す「スクラップ アンド ビルド」がなんと”推奨”されたからと言われています。

新しいものがいいとされ建物は古くなれば建替えて経済成長を促すことが優先された結果、環境問題や空き家問題につながっています。社会が高速で変化している中で、戦後の認識からここだけいまだ抜け出せず新築にこだわるのはナンセンスにも思えます。

循環型社会を目指す現在はメンテナンスすれば100年以上もつ木造住宅も見直されはじめました。古くなれば安くなる固定資産税の影響で価値がなくなると思われてしまう古い家ですが、そうではなくて建物自体の価値を評価し価格づけしたり金融支援も行われるようになってきました。

ドイツではアンティーク同様、古い家ほど価値が高まるそうです。日本の古民家もいずれそんな再評価がされる日がくるはず!と思うと今が買い時なのかもしれません!

<参考書籍・参考サイト>

川上幸生『古民家の調査と再築』一般社団法人住まい教育推進協会(2019)、SUUMO「ベタ基礎・布基礎って何? どっちがいいの? 家の基礎(土台)の事情」、建築情報ブログ たくみのかわらばん「筋かい(筋交い)とは?筋かいの役割と壁倍率について解説」

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