古民家とセットでほぼ必ずと言っていいほどある庭ですが、坪庭や通り庭などいくつか種類があります。実は土間もかつては「ニワ」と呼ばれていました。
今回は民家の庭へとつながるまでの日本の庭の歴史や、古民家にどんな庭の種類があるのかご紹介します。
古民家カフェとか行ったらつい家ばかり見がちだけど、庭も見逃せないんだね!
日本の庭は飛鳥時代からある!
日本の庭を最初につくったのは飛鳥時代(西暦592年〜710年)の蘇我馬子だそうで、石や池を配置させていたようです。
ざっくり日本の庭の変遷です。
- 飛鳥時代蘇我馬子がはじめてつくる
石や池を配置
- 平安時代「作庭記」が書かれる
寝殿造の豪華な邸宅に自然を写したように庭を作る方法が書かれている。また、浄土庭園という仏書などに書かれた浄土の世界を表した庭もつくられるようになった
- 室町時代枯山水
日本庭園の黄金期。禅宗から影響を受けた水を使わずに石や砂で山や水の風景を曲線的抽象的にあらわす枯山水がつくられる。京都の龍安寺が有名。
- 江戸時代回遊式庭園
日本庭園の集大成。大きな池を中心に築山(つきやま)や順路をつくる池泉(ちせん)回遊式庭園が多い。この頃から一般民家でも庭が重要視されるようになる
- 現代西洋の影響を受けた開放的な庭
広く芝生をはった新宿御苑など
古民家の庭の特徴
一般の民家でも庭が意識され始めたのは回遊式庭園がつくられるようになったころです。
築山には滝や石をつくって庭には入れず見て楽しむものや、
自由に出入りして楽しむものがあるよ
自然の景色をあらわしたのが日本庭園の特徴ですが、古民家でも取り入れられています。
考えたらすごくおしゃれだよね!
発想がダイナミック!
町屋ならではの坪庭(つぼにわ)
町家は「うなぎの寝床」と呼ばれる細長い間取りが特徴です。そしてそんな間取りには採光と風通しのために坪庭が欠かせません。
町屋は都市部でつくられ、たくさんの建物が寄せ合うように密集しています。
そんな中でも、草花や木、竹、飛び石や灯篭など趣向をこらした空間づくりをして楽しんでいました。
坪庭は中庭とも呼ばれます
町屋で見られる庭の種類
坪庭以外にも町屋にはいくつかの庭の種類があります。地域や場所によって呼び名が変わることもあるので紹介します。
通り庭・通り土間
建物の面(店先)から裏まで続く土間で、京都では通り庭と呼ばれます。土間なので、庭とよばれますが屋根の下です。
公に面する「ハレ」の空間である表側(店先)は店庭、台所の流しがある部分はプライベートな「ケ」の空間で走り庭と呼ばれます。
この通り庭は京都以外では通り土間と呼ばれます。
前庭(ぜんてい)
古民家の前にある庭です。石が敷かれ玄関までのアプローチを示しながら、四季折々の草花や灯籠などでお客様を迎えます。
またご近所とのコミュニケーションの場所でもあります。
露地(ろじ)・茶庭(ちゃてい)
もともと町家の家同士をつなぐ細い道のことを露地と呼び、茶室につながる道は路地とよばれました。江戸時代になってそれが茶室の庭園を表し露地となりました。
茶庭とも呼ばれ、飛び石や蹲(つくばい)と呼ばれる手を清めるための手水鉢、腰掛(腰掛ける台・いす)、石灯籠などが配置されます。
こだわればおもしろい古民家の庭
現在では庭がある家自体が少なく、都市部で庭があるとついお金に余裕がありそうなおうちと見られることもあります。
確かに庭は土地の広さや植木などの植物の管理、必要があれば庭師に依頼したり、水道代などお金も手間もかかるのは事実です。
古民家リノベーションの際も庭は負担に感じる人も多く人工芝にしたり、コンクリートや砂利を敷いて駐車場にしたりしているところも多いようですが、こうやって庭のおもしろさを知ると意外とハマる古民家の要素のひとつになるかもしれません!
<参考書籍・参考サイト>
川上幸生「古民家の調査と再築」一般社団法人住まい教育推進協会(2019)、宮元 健次「雑学3分間ビジュアル図解シリーズ 神社・寺院・茶室・民家 違いがわかる!日本の建築」株式会社PHP研究所(2010)、にぽにか「2 日本庭園 様式の変遷」、