間仕切りだけじゃない!障子の機能と主な種類6選

障子のサムネイル古民家の空間と部位
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木と和紙で作られている障子は実は吸湿性にも優れています。しかも部屋の間仕切りも担う他にも閉じたまま採光までできるという実はかなり機能的な建具なのです。

障子の誕生はなんと平安時代(794〜1192頃)で、古民家に限らずもちろん現代に至るまで使われています。

今回はそんな障子のつくりや機能、種類について解説します!

同じく襖も間仕切り建具
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障子の機能

平安時代の障子のイメージ
平安時代の障子のイメージ

障子は組子(くみこ)と呼ばれる格子状に細い木を木枠に組み込み、その片面にだけ和紙などを貼って引き違いにすることで部屋や内と外などの空間同士を仕切ったり開放する建具です。

「空間を閉じる」という機能と「光を採り入れる」という一見矛盾してみえる機能を同時に持ち合わせた障子は誕生当時とても画期的なものとして広く普及し始めました。

日本では組子が見える側が表で室内を向きます(中国は逆だそうです)。棧(外枠部分)は多くが杉が使われています。

和紙による「光の拡散」

障子のアップイメージ

障子は直射日光は遮りつつも透過率50%ほどと十分な光を室内に通します。そして和紙には「光の拡散」という性質があります。

通常窓ガラスだと入ってきた光は窓際では明るいものの、部屋の奥につれて暗くなり部屋に明暗のコントラストが生まれます。

対して和紙は透過した光を四方に均等に拡散させるため部屋全体を優しく明るい空間にすることができるのです。

棧にも和紙にもある調湿・保温機能

和紙は多孔質で目には見えない小さな孔がたくさん空いています。湿度によって水分を取り込んだり放出したりして調湿するため、冬の結露や夏の不快な湿気対策にもなります。

さらにその孔を通して障子を閉めている時でも外から新鮮な空気を取り込みつつ、空気中のホコリや汚れは吸着してくれる空気清浄機のフィルターのような働きをしてくれます。

また冬の寒い日であっても和紙1枚でアルミサッシの3倍の力で冷たい空気を遮断すると言われています。

冬は閉めて風を防ぎ、障子越しに日が当たることで部屋の中には暖かい温度を保つことができますが、夏は冷房で冷えた室内の温度を保つ保温効果もあることが知られています。

同じく多孔質な木の特徴はこちらの記事で詳しく

紫外線を防ぐ

紫外線を防ぐ障子

和紙は紫外線の遮断率が80〜90%であることがわかっており、意外にも高いのです。この紫外線で障子自体は変色しますが、かわりに室内の畳や壁の変色や傷みから守ってくれます。

畳や壁は容易に取り替えられませんが、和紙は張り替えだけで済むことを考えると手間もコストも大きくありません。

和紙の紫外線遮断の理由の一説には、原料である木の繊維が和紙内部で乱反射を起こし透過する紫外線量を減少させるそうです。

環境破壊が進んでいなかった昔は紫外線の被害も大きくなかったはずですが、現代になって新たな障子の強みがわかったことは興味深く、先人が残してくれたものの効果に驚きます。

デザイン性の高さと容易なメンテナンス

障子の張り替えグッズ

カーテンを外したときに部屋が広く感じたことはありませんか?カーテンは布ではあるものの意外と幅をとっているため、数が多いほど実は圧迫感も出ます。カーテンは汚れも付きやすくホコリの原因にもなりやすいです。

それが障子だと壁よりも薄い上に、うっすらと外の様子を感じるため空間の広がりを感じることができます。また和紙の白には部屋を広く感じさせる心理的・視覚的効果もあります。

また障子は和紙を張り替えるだけで新品のようなメンテナンスができるという手軽さがあります。慣れれば自分で張り替えることもできるので、昔から業者要らずでコストパフォーマンスも高いのです。

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代表的な障子の種類6選

昔は襖(ふすま)も衝立もみんな障子と呼んでいました。それが和紙をはって光が通り明るい空間を作るようになると「明障子(あかりしょうじ)」と呼ばれるようになりました。

障子は骨組みである組子の組み方によって種類が変わってきます。

横繁障子(よこしげしょうじ)

横繁障子

障子紙が貼られるだけの水腰障子に分類される障子の一つです。横繁障子は関東地方でよく見られる障子です。横の組子が細く多く組まれているのが特徴です。

縦繁障子(たてしげしょうじ)

縦繁障子

障子紙が貼られるだけの水腰障子に分類される障子の一つです。関西地方に多く見られます。縦に細い組子が多く組まれているのが特徴です。

荒組障子(あらぐみしょうじ)

荒組障子

棧の組み方が荒く、縦横共に組子の感覚が広いのが特徴です。今でも一般家庭で多く見られ親しみのある組み方です。こちらも障子紙だけの水腰障子に分類される一つです。

腰付障子(こしつきしょうじ)

腰付障子

障子紙だけでなく下部に腰板を張った障子です。板を貼ることで強度が高まるため、出入りが頻繁な場所に取り付けられました。

足でうっかり障子を破ってしまったり、組子を折ったりしないためです。また、障子が屋外でも使われていた頃は雨風で障子が破れないようにするためでもありました。

現在は板の高さは30cmほどですが、以前は70cm以上のものもあり腰高障子と呼ばれました。障子が屋内で使われることが多くなり減少しています。

雪見障子(ゆきみしょうじ)

雪見障子

ガラスがはめ込まれている障子をガラス障子と呼びます。雪見障子もその一つです。寒い日障子を開け放たなくても文字通り部屋から雪を楽しむことができます。

もちろん雪だけでなく四季折々の外の景色が鑑賞できますが、とにかくネーミングが素敵ですね。

ガラスは一部にはめ込まれているものもあれば全面ガラスの障子もあり、和紙部分の障子を上げ下げできるタイプなど色々あります。

猫間障子(ねこましょうじ)

猫間障子

猫間障子もガラスがはめ込まれている障子ですが、雪見障子と違い、障子の一部だけがガラスで和紙部分が可動式になっているのが猫間障子です。

猫が障子を破って外に出ないように、元々はガラスはなくただの小さな通り穴だったそうです。猫間障子の起源は江戸時代なのでその頃から猫ドアがあったのですね。

また、寝間がなまったものとも言われ、就寝中の換気用としてもとりつけられました。

障子の弱点

いいことたくさんの昔からの建具ですが、いくつかの弱点もあります。きちんと知っておくことで自分の家に合うか検討することも大事でしょう。

  • 破れやすい
  • 燃えやすい
  • まぶしい
  • 変色する
子供と障子

破れやすい

張り替えの時はわざと突き破ったりして楽しいですが、小さなお子さんや猫などのペットがいる場合は障子破れの覚悟は必要でしょう。

まぶしい

障子は白さが際立つため、季節や天候、時間帯によってまぶしく感じる人がいます。私もあまり目が光に強くなく、夏の昼間はカーテンをほとんど開けられないような人です。そういう人は障子を設置する場所・部屋・方角に注意し、障子の枚数を減らすなどの工夫をしましょう。

変色する

フィルター効果もあるほどの障子ですので、タバコを吸う人などは通常より張り替え頻度が高くなることもあります。

それでも平安時代から使われ続けてきた実績高い障子。とり入れられるところではぜひとり入れてみたいものです。

古民家にもとり入れたい障子

組子の組み方や構造、和紙だけでなくガラスや板など他の素材との組み合わせによってそのデザイン性は高く、機能性とも合わせて国際的にも高く評価されているのが障子です。

今はプラスチック障子紙もありますが、これほどの和紙の効果は期待できないでしょう。

私も子供の頃は「ダサいなぁ、古くさいわぁ」と思っていましたが、これだけ障子の良さを知ると使わないのがもったいないですね。

ただたて付けてあるだけに見えていた障子が心強く見えてきそうです。自分で張り替えもできるようになると愛着も湧いてくるかもしれません。古民家での新しい見どころの一つとして楽しんでみてください!

障子貼り替えセットで気軽に挑戦も!

<参考書籍・参考サイト・写真提供>

宮元 健次『雑学3分間ビジュアル図解シリーズ 神社・寺院・茶室・民家 違いがわかる!日本の建築』株式会社PHP研究所(2010)、石川るい子編著 清水康造監修『古民家暮らし私流』飛鳥新社(2002)、和の知識「4.障子」、MOLZA「和紙の素材感」、INTERIOR FORCE「部屋を広く見せる!色を効果的に活用したテクニック8つ&狭い・広い比較」、AR JAPAN「和紙の紫外線カット率はなんと80%以上!」、写真提供:photoAC

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