最近の住宅と比べて昔の民家の天井はいろんな形や素材で出来ていました。昔の人の知恵が凝縮している古民家は天井にも様々な工夫を見ることができます。
そんな古民家の天井にはどんな種類があるのか見てみましょう!
天井はなぜ必要なのか?その役割
普段あまり天井を意識することはないかもしれません。でも天井がなかったら意外と困ることもあるのです。
ただし、一部の古民家のように小屋組に横たわる梁を見せる化粧屋根裏天井など意匠(デザイン)のひとつとしているところもあります。人によっては落ち着かなかったり寒さの要因ともなりますが、開放的で木の存在感が感じられるものです。
屋根を支える骨組み。小屋梁から上を指し、母屋、垂木、棟木などから構成される
土壁や真壁造からもわかりますが、この製材されていない丸太そのままのせた小屋組も伝統構法の特徴の一つですね。日本の木造軸組構法で建てられたものの中でも伝統構法によるものは1%しか残っていません。その貴重な一つがロヂウラにありました。ありがとう、ありがとう。
古民家で見られるさまざまな形の天井
最近の住宅の天井は平面のものが多いかと思いますが、実は壁や床と比べると必ずしも水平垂直である必要がないのが天井です。その分家や屋根の構造によって選択の幅も広くデザインも凝ることができます。
代表的な天井の形状です。
平天井(ひらてんじょう)
水平に貼られた天井で、現在でも一番一般的です。和室、洋室ともに用いられます。仕上げ材を問わず水平の天井の総称が平天井です。
勾配天井(こうばいてんじょう)
屋根の勾配に沿って張られるのが勾配天井です。屋根裏ができない分、室内空間を広くとることができます。またあまり桁高(地盤から軒・雨樋あたりまでの高さ)がない家でも圧迫感のない室内空間にすることができます。ただし、屋根裏がないため太陽の熱が室内に伝わりやすい構造です。
上の写真は福岡市の箱崎にある天井桟敷というお店の天井です。映り込んでいませんが、こちらにはステンドグラスの天窓があったりライトなどを設置されています。勾配天井は他の形状の天井に比べてデザインも工夫しやすいものです。
また、小屋組や屋根材料をそのまま見せている天井は化粧屋根裏天井といい古民家の見どころの一つです。
船底天井(ふなぞこてんじょう)
船の底を裏返しにしたような形の天井です。中央部分は平らになっていることが特徴です。中央部分が平らでなく、山形なっているものは屋形天井と呼びます。
船底天井は数寄屋造りや茶室でもよく見られ格式高い印象になります。なかなか手の込んだつくりですね。こちらも屋根裏が狭くなるため、室内の温度が上がりやすいです。リフォームの際などには断熱材などで対策が必要です。
折り上げ天井(おりあげてんじょう)
天井回り縁という壁と天井の境目につける部材があります。通常はそこからすぐ上が天井になりますが、折り上げ天井はそこからさらに一段高い位置に天井を張ったものです。通常よりも高く天井を設けたい時に用いられました。
現在の住宅で折り上げ天井というと天井の部屋の中心部のみ上にへこませた形状で、スタイリッシュでグレード高い天井に見せるのに使われ、古民家で見られるものとは印象が違います。
掛込天井(かけこみてんじょう)・落ち天井(おちてんじょう)
掛込天井はもともと茶室で取り入れられていた形状です。平天井と化粧屋根裏勾配天井が組みあわったような形状になっています。屋根の垂木がそのまま室内に掛けこんでおり、室内の狭さを緩和させてくれてたり広間を一層広く見せたい場合にも採用されます。
通常、化粧屋根裏勾配天井には小舞や網代(竹や木を編んだもの)、平天井(平面部分)には格子状のデザインなど仕上げ材は違うものが使われます。茶室では天井の高い方に客人、低い方の落ち天井に主人が座りました。天井を見上げれば自分の座る位置が分かるんですね。
天井は隠れた古民家の見どころ
古民家に行くとつい上を見上げてしまったことがあるかもしれません。普段は見られない天井のつくりは古民家が非日常感を与えてくれる理由の一つかもしれません。
ご紹介した天井のいくつかは今も和室などで採用されているものもありますが、船底天井や掛込天井など普段あまり見ることがないものもあると思います。ぜひ古民家を訪れた時には見上げて天井にも注目してみてください。次回は天井の仕上げ材についても紹介します!
<参考書籍・参考サイト>
川上幸生「古民家の調査と再築」一般社団法人住まい教育推進協会(2019)、中山章「知っておきたい住宅設計の基本 図解日本の住まい」建築資料研究社(2009)、東建コーポレーション株式会社「船底天井(フナゾコテンジョウ)」、和風住宅の基礎知識「掛込天井」