玄関や縁側の三和土(たたき)とは日本の伝統的な床素材であり、天然の素材の赤土や石灰、にがりなどを混ぜたものです。古民家の土間は土の床のようにみえますが、実はこれらが叩き固められています。
伝統的な三和土が使われることは少なくなりましたが、玄関や縁側の三和土は和風の雰囲気を演出するのに適しており古民家再生やDIYで再注目されています。
最近だと建築家やデザイナーによって
現代的な作品に取り入れられることもあります
三和土の由来と特徴
三和土の由来と土間との違い
三和土は「たたき」と読みます。赤土・砂利、石灰とにがりの3つの材料を合わせて塗って叩き固めた敲き土(たたきつち)の略といわれています。
四則演算でも「和」は「足す」とか「合わせる」の意味だよね
昔から玄関土間で用いられることが多かったため、現代でも呼び名が残って素材に関わらず玄関の床を広く三和土と呼ぶことも多いです。
玄関といえば土間との違いに混乱する人もいるかもしれません。
明治になるまで一般の民家に「玄関」は許されておらず、
土間があるだけでした
三和土の特徴とメリット
敲き土に使われる花崗岩や安山岩などは石灰と水を加えて練ると硬まる性質があることから、地面を固める方法として広く使われました。明治初期にセメントが流通すると三和土が使われることは激減していきます。
古民家は地産地消の材料で建てられることが基本です。そのため三和土も地元の土が使われ地域によって色合いや特徴があります。
三和土を使うメリット
三和土には天然素材ならではのメリットがあります。
三和土も木などと同じように「呼吸する素材」のため、調湿効果や調温効果があります。
もちろん三和土は合成材料は使われず、タイルなど他の素材に比べて滑りにくいので雨の多い季節も安心です。
何よりも人の手によって丁寧に締め固めていくため、表面にはうっすらとデコボコが残るのも自然の風合いとして落ち着きを与えてくれます。また、意外と砂ぼこりもたちにくいのです。
三和土を使うデメリット
明治以降セメントが輸入されてからは三和土が激減したように、三和土にもデメリットがあります。
- 作るのに人員と手間、時間がかかる
- コンクリート等に比べて水に弱く、強度や耐久性に劣る
- 経年変化で表面にデコボコが出やすくなる
簡単な作り方を後述しますが、三和土は名前の通りとにかく何度も叩いて乾燥させることでかなり強くなっていきます。
そのためのさまざまなコストが大きく、強いと言ってもコンクリートほどではありません。また、時が経つにつれて表面がデコボコしたり、色が変わってきたりします。
もちろん定期的に修繕することで解決するものであり、長寿な古民家はこういった箇所一つ一つを長い間ケアし続けてきたからでもあります。
三和土はDIYもしやすい箇所なので、自分でできるようになれば
長期的にみると経済的なコストはむしろぐっと下がる可能性もあります
三和土づくりの材料配合と「締固め」
三和土は以下の3つの材料を合わせ、叩き棒や叩きコテを使って硬くなるまでとにかく叩きます。厚さは10cm程度ですが、できるだけ平面になるように同じ強さで叩く必要があります。
広さがあると確かに大変ね
三和土の材料の役割と配合量
材料について詳しくみてみましょう。
配合量については通常【土:石灰:にがり=3:1:0.3】とも言われます。
ただし実際には決まっておらず土の成分にもよるため、通常は施工前にいくつかサンプルを作って検討することが多いようです。
石灰は粘土の硬化を助け、にがりは冬場三和土の凍結を防止する役割があります。にがりの代用品として塩化カルシウムを使うか、塩化マグネシウムを使うかを検討されることもあります。
土を「締固め」る理由
三和土を作るときの叩いて締固める作業は「土付き」と呼ばれます。
空気に触れないことでカビとかが繁殖しにくくなるんだね
日本は湿度も高いし雨も多いから、
ここにも先人の知恵なのです
三和土の「土付き」と「ヨイトマケ」
三和土の土付きは「ヨイトマケ」とも呼ばれます。「ヨイトマケ」といえば歌手の美輪明宏さんが作詞作曲して1966年に大ヒットした曲として知られていますね。
建設重機があまりなかった時代は、石や重い木を槌(ものを叩く道具)としてロープを巻きつけ数人がかりで滑車を上下させて地固めを行っていました。その滑車を引っ張る時「ヨイっと巻け」と掛け声をしていたそうです。
家を建てる時もさまざまな作業が機械化したり耐久性を増した素材が登場しましたが、なんとなく人力で固められた地面にはそれら以上の力強さがあるような気がします。
自然の一部である人間の力と思いが自然の素材を通じてそのまま地面に届く。現代から考えればそれはなんだかとてつもなく熱いものに感じるのです。
一休.com<参考書籍・参考サイト>
川上幸生「古民家の調査と再築」一般社団法人住まい教育推進協会(2019)、ハマニ株式会社「左官を考える会in常滑(三和土について)」、houzz「三和土とは?本格的な土間のつくりかた」