古民家に使われている壁 土壁・漆喰・珪藻土

珪藻土の壁古民家の素材
記事内に広告が含まれています。
スポンサーリンク

再生された古民家でも漆喰はよく使われています。漆喰は伝統的な左官仕上げ材でありながら塗りやすく比較的安価で取り入れやすい壁の素材です。

漆喰は平安時代から使われていますが、もっと古いものだと土壁、そして近年はシックハウス対策でも人気の珪藻土も古民家リノベーションで活用されています。

今回は日本家屋でつかわれてきた壁の特徴を古い順に見ていきたいと思います。

スポンサーリンク

茶室で取り入れられた土壁

土壁
長崎 波佐見。美のり窯の土壁

土壁は日本の伝統的な壁の作り方です。もともと茶室の中はすべて土壁で、匂いや感触や色などの土独特の質感が茶室を演出しました。

土壁の特徴
  • 和の空間が出しやすい伝統的な真壁構造で使われる
  • 高い吸湿性
  • 見えない下塗り・中塗りには同じ材料を使うが、目に見える仕上げにはさまざまな土が使える
  • 都市部では特に材料の入手が難しく施工が長くかかり高価になりがち
  • 内壁に筋交いをいれにくいため耐震性が低い
真壁造(しんかべづくり)

伝統木造家屋で用いられる柱や梁が露出しているつくり

基本的な土壁は荒壁と呼ばれ、柱との間に格子状に小舞竹と呼ばれる竹材を組んで下地を作り、そこに砂・粘土・水そしてつなぎにスサと呼ばれる細かい藁を混ぜたものを何度も塗りかさねていきます。

貫(ぬき)

柱に穴を掘りぬき、柱同士を繋ぐために貫き通す横材

この荒壁の上に聚楽土(じゅらくつち)、紅殻(べんがら)、錆、漆喰などを仕上げ材として塗って色や雰囲気を変えることができます。聚楽壁は上質な壁土で黄褐色に黒点模様となり、紅殻壁は赤褐色、錆を混ぜたものはもの暗い仕上がりとなります。

壁の竹組み
美のり窯では土壁を取り壊して小舞竹を見せた雰囲気ある窓にしている。壁は珪藻土。

土壁は水に弱く定期的なメンテナンスも必要です。また塗り替えには高い技術が必要なためDIYも難易度が高いようです。ただ耐火性や調湿性、消臭・有害物質の吸収などさまざまなメリットがあり、近年それらの良さが見直されています。

スポンサーリンク

今も昔も人気の「呼吸する壁」漆喰

福岡春日 豆づか山の漆喰壁
福岡春日 豆づか山の漆喰壁

漆喰は日本の伝統的な壁材のようですが、実は世界中で使われています。

漆喰は石灰石を原料に消石灰という粉状にしたものから作られています。(消石灰は学校のグラウンドの線引き剤や乾燥剤にもなっているものです。)

日本では粘りと保水性のある海藻のりとヒビ割れ防止の麻スサと呼ばれる細かい麻をまぜて耐久性を上げたものが本漆喰塗りと呼ばれ、現場で海藻のりを炊くのが伝統的な作り方です。

この漆喰を荒壁に塗りつけていました。

土佐漆喰が有名ですが、最近は伝統的な海藻のりではなく化学糊をつかった工場生産された漆喰が使われることも多いようです。

漆喰の特徴
  • 比較的安価で、塗りやすいためDIYにも向いている
  • 通気性・調湿性に優れている
  • 有害物質を吸着する
  • 高い防火性
  • 白だけでなく着色もできる
  • 固まるまでに時間がかかる
  • ひび割れることがある

漆喰は「呼吸する壁」と言われるほど通気性が良く調湿性に優れ、有害物質を吸着するため最近はシックハウス対策としても取り入れられています。

ただし化学糊を使用すると呼吸するための孔が塞がれメリットを得にくいことがあります。また原料の石灰石はもともとサンゴなので燃えません。

古民家だけでなく、昔はお城や土蔵にも使われるほど防火性が高いのも特徴です。

デコボコの漆喰塗り

乾くまでに時間はかかりますが、乾燥する過程で硬い被膜をつくり強靭なものとなり、長い年月をかけて呼吸を続けることで硬度が増し耐久性も上がるのです。

平面の鏡のような美しい仕上がりは職人技ですが、わざとデコボコを残したり、波打つような塗り方を楽しむこともできDIY向きでもあるので古民家リノベーションでも人気です。

(ただし場合によっては職人さんが必要なこともあるため相談しましょう。)

海藻のりを使った漆喰も販売されています

多孔質の特性を網羅する珪藻土

珪藻土の壁

珪藻土は最近コースターやバスマットなどの生活小物でもよく使われています。文字の通り、珪藻という藻類の一種で殻の化石が海底や湖底に長年堆積した泥土です。

実は七輪や耐火レンガの原料としても昔から使われていました。

最近よく見るようになったのは固化材が発達し水で練るだけで使えるようになったため、壁や土間などにも用いられるようになったのです。

珪藻土の特徴
  • 完全無機質のため燃えず有毒ガスも発生しない
  • 断熱・保温・調湿・防音・遮音・脱臭・吸煙機能に優れる
  • シミになりやすく、粉が落ちやすい

珪藻土は超微細で多孔質の特性を網羅しています。特に調湿は漆喰よりも優れており結露防止でも活躍します。

高い保温性は冷暖房効率が良く省エネにもなり、ホルムアルデヒドなどの空気中の有害物質を吸着し無害なものにしてくれます。

珪藻土の板の腰壁

ただし、漆喰と同じで固めるための固化材に合成樹脂を使ったものは孔が塞がれて珪藻土の良さが出し切れません。

DIYもしやすい素材ですが、メーカーや原料によって変わるのでDIYで使うときは確認が必要です。

見直されている天然素材の壁

土壁や漆喰や珪藻土にはクロスの壁紙では到底出せないような性能が多くあります。壁は家の中でかなり大きな面積を占めるものです。化学素材で覆うのと天然素材で覆うのとでは快適さや体の影響は大きいことでしょう。長く住むことを考えると大いに検討する価値のあるものです。

特に漆喰や珪藻土は壁だけでなく床材や天井材にも使うことができるので、同じく多孔質の木材と合わせて使うと機能性もデザイン性も増します。漆喰も珪藻土も水に弱く水拭きは向きませんが、シミや変色も木のような天然素材特有のものとして経年変化を楽しむこともできます。

漆喰や珪藻土は土壁に比べて取り入れやすくメンテナンスも自分でできるDIY向きでもありますが、重要な箇所には職人さんにお願いすることも必要です。相談しながら古民家再生やリフォームの際は挑戦してみるのもいいかもしれません。

<参考書籍・参考サイト・写真提供>

喜入時生著 松本幸大監修『しくみ図解 建築材料が一番わかる』技術評論社(2014)、宮元 健次『雑学3分間ビジュアル図解シリーズ 神社・寺院・茶室・民家 違いがわかる!日本の建築』株式会社PHP研究所(2010)、石川るい子編著 清水康造監修『古民家暮らし私流』飛鳥新社(2002)、ホームプロ「土壁のリフォーム方法と費用相場。砂壁との違いやDIYについても解説」、漆喰 誰でも!家で!簡単に塗れる!!!うま〜くヌレール「漆喰とはなにか?漆喰の基礎知識をお教えします!」、ホームプロ「珪藻土の壁の魅力とは?性能、効果、お手入れ、費用など徹底解説」、一部写真提供:photoAC

タイトルとURLをコピーしました