ひっさしぶりの古民家探訪は福岡市中央区のロヂウラベーカリー黒門に行ってきました!地元でも人気のパン屋さんで、イートインできる2階ではゆっくりじろじろ古民家に浸れました……。
最近は古民家の勉強に明け暮れてたから癒された
またも参加できず〜
ROJIURA BAKERY 黒門は推定築80年以上?
ROJIURA BAKERY 黒門は3年ほど前に福岡市中央区黒門にオープンしたベーカリー&カフェです。ちょうどアメリカ領事館と大濠公園の間で、住宅街に溶け込むように建っています。
それはそのはず、この建物はもともとは一般の民家。どんなご家族が住んでいたんでしょうか。周囲にもまだ木の窓枠が残る家がチラホラあります。黒門、唐人町あたりは古民家が多そうです。左隣はこちらも古民家を改装した「クロモンコーヒー」という焙煎にこだわるカフェがあります。
お店の方によるとこの建物は「はっきりとはわからないけれど、戦前のものだときいている」とのこと。某口コミサイトのレビューでは築85年との情報もありました。
外壁はトタンかカラー鋼板のようにみえました。木枠のドアが妙に存在感あり、開けたくなる衝動をおさえつつ表からお店に入りましょう!
隣にショベルカーが置いてあって更地になっていたので、
もしかしたら古民家の解体があったのかなぁと地味に気になる……
ワクワクさせてくれる謎の通路
入口はお店に向かって左側の細い通路から入ります。天井が低くどことも知らないところへの通り道のようでちょっとどきどきするのです。
この通路、もともと何に使われていたのか気になりますね。元の状態のままあまり改装された感じもありませんでした。突き当たりのドアの向こうは外のようだったので、町家スタイルの民家であれば坪庭に続く通り土間かもしれませんが、左右とも壁なので本当に単純に通路だったのでしょうか…。
土壁は剥がさず、使い方!と思わせる1階
お店に入るとなんともおしゃれな空間がひろがっております。外観の古民家然とした感じとは全く違った雰囲気です。階段周りはきれいにリノベされているようです。でも1階で一番気になるのは壁でした!
よく見ると藁が残っているのが見えたのでもともと土壁におそらく漆喰が塗られていたものかと思います。それにしてもこの上部だけ土壁を残すセンス!土壁はリノベーションされると全部剥がされてしまうことも多いようですが、できるだけ残すだけでなく、もはやアートになった土壁なのです。ほんとに使い方だよなぁと感心してしまいました。パンとこんなに絵になるとは、元の住人も思いますまいて……。
こちらは道路側の壁です。下部は大きなガラス窓になって、外から店内の様子がよく見えるようになっています。
この壁は漆喰か色土壁でしょうか……。ひび割れもあえて直さずなセンスになんだかマスクの下で鼻息が荒くなるのですね。白熱灯があたって空間のあたたかさを感じます。
(マスクあってよかったね……。でももうすぐ解禁だから心配よ)
小窓部分の壁をくり抜いたように見えたので後付けかと思ったらお店の方によるとこの窓は元からあったものだそう。なんだか大変かわいらしい形なのです。
天井はもともと張られていなかったのか取りはずされたのかわかりませんが、手前と奥で張り方が違っています。手前は2階のメインの床下地のようで結構幅広く、奥は2階縁側のような空間に続いており幅狭めな板材がきれいに張られています。
1階だけで買ったパンが食べ終わりそうなほど書きそうなので2階へ行きましょう……。
厨子三階?な建物構造
階段は昔のままのようですが、変に長いなと思ったらここは2.5階な建物なのです。厨子二階ならぬ厨子三階のような、2階にあがったところからさらに上に2階を見下ろせる形で小さな空間があるようでした。
今はSTAFF ONLYになっていますが、昔はどうやって使われていたのか気になります。
天井が低い二階部分をもつ建物のこと。大名行列を見下ろす不敬にならないよう完全な二階は禁じられた江戸〜明治の町家で用いられた建て方
「厨子三階」はただの例えでたぶんそんな用語はありません。あしからず……
伝統構法をわかりやすく楽しめる2階天井
2階に上がると大きな窓で開放的なイートインスペースになっています。ソファ席もあってとても居心地がいいのです。先にいらしたおじいちゃんがうとうとされていたのでシャッター音で起こさないかちょっと気にしながら写真を撮るのです……。
窓側から2階をみたところです。上部に新材で張られた2.5階部分がみえます。古民家再生で新材を使った場合は古色塗装することが多いですが、ロヂウラベーカリーはそれをほぼせずに新材そのままつかっているようです。古材も新材もあるままそのままの良さを活かそうとされたのかもしれません。
そして古民家で見上げずにはいられない天井です。屋根下地はきれいに新材が張られていますが、小屋組は古材が健在です。
屋根を支える骨組み。小屋梁から上を指し、母屋、垂木、棟木などから構成される
土壁や真壁造からもわかりますが、この製材されていない丸太そのままのせた小屋組も伝統構法の特徴の一つですね。日本の木造軸組構法で建てられたものの中でも伝統構法によるものは1%しか残っていません。その貴重な一つがロヂウラにありました。ありがとう、ありがとう。
そしてここの小屋組を支える部材たちは細身でなんだかかわいらしいのですね。これまでの箱崎の天井桟敷や佐賀の佐嘉平川屋などたまたま古材はとにかくぶっとくてでっかい!って感じが続いていました。ロジウラベーカリーは「細いけど、でもがんばってるもんね!」というなんとも言えない健気な感じが伝わってくるのです。事実80年以上、この家を支えてきてくれました。そう思うとだんだん目が離せなくなってくるのですよ……。
ずっと上見てたら他のお客さんも見上げはじめちゃって、
なんかすみませんって感じになってしまった……
しかしそうは言っても何本も丸太がまるまる乗ってる姿はやはりすごいのですね。毎度よく乗っけるよなぁと思わずにいられません。よく見ると桁が壁の向こうにまで繋がってるように見えたので、お隣のクロモンコーヒーまで続いているのかもしれません。
そしてスマホだと気づきにくいかもしれませんが、これまで載せてきた写真の多くに写っているのが…
この木組みのあとなんですね。ほぞ穴がたくさん残っています。空間を広くするために一部を解体したのかと思いますが2階の至る所で見られます。木組みは昔の大工さんが釘を使わずに部材を組み上げた職人技です。ちょうど最近木組みを勉強していたのでたくさん見られてすごく嬉しかったです。
でも思い出したら柱の穴覗き込んだりして、
マドレーヌさんもいないし、ひとりでめちゃ変な人だったよ……
(あまりひとりで行かせると色んな意味でキケンだわ……)
また床には敷居も残っているので、この木組みのあとと敷居や、ほぞ穴同士をつなげるとどんな間取りだったか見えてきそうです。(部材が本来とは違う場所で使われていることもあるかもしれませんが。)
そこで暮らした人々がどんな生活をしていたのか分かりませんが、つくりから想像したり思いをはせたりするのはその民家の思い出を引き継いでいく作業であるような気がします。再生してくれたお店だけでなく、利用する側もこれまでその建物を守ってきてくれた人たちのことをときどき思い出してみんなで大事に残していきたいですね。
ROJIURA BAKERY 黒門を味わう
今回はおいもと発酵させたパンや、サルタナとチョコガナッシュのパン、クリームチーズとドライフルーツのハードパン、ロヂウラブレンドコーヒーを頂きました!家に気を取られすぎて気がついたら1個しか残っておらずパンの写真をちゃんと撮り損なってしまいました……。撮り直しに行かなければ!
どれもおいしかったのですが、個人的にROJIURA BAKERY 黒門は買いやすいです。最近のパン屋さんはびっくりするくらい高いところもあるので、身近なはずのパン屋さんの存在が少し遠く感じられる今日この頃。ROJIURA BAKERYは100円台からのおいしいパンを提供してくれています。この物価高にお店の努力でしょうか。ありがたい。
11:30ごろ行きましたが、お店を出た12:00頃は例の入口通路にお客さんが並んでいました。近くだったら私も普段使いしたいお店、うらやましい!
ROJIURA BAKERY 黒門 店舗情報
住所 :福岡県福岡市中央区黒門4-23
TEL : 092-791-9605
<営業時間>8:30~18:00(イートインL.O. 17:00)
<定休日> 火・水
<駐車場>不明
某口コミサイトではカード可になっていますが、PayPayか現金のみでした。ご注意を。
お昼前のお忙しい中、お話をきかせてくれたスタッフさんありがとうございました!またおじゃまします!