古民家と庭は実は切っても切れない関係です。飛び石や灯籠、手水鉢など置いてあるもの全てに意味があります。
今回は縁側から見える景色を古民家に住んだ人たちがどのように楽しんでいたのか紹介します!これまでなんとなく見ていた庭がずっとおもしろく感じられるようになりますよ!
石

日本庭園の要は石です。日本の代表的な庭の様式には回遊式庭園、枯山水庭園、露地庭園の3つがありますが、どれも石が主役になっています。
西欧の「ガーデン」が草花を中心に愛でるのと対照的にそういったカラフル要素はむしろ排除されており、石がない日本庭園はないでしょう。
古来から日本人は樹木や石などの「不動なもの」に神が宿ると考えていました。神社が大きな木や石で守られていることからも分かりますね。

あ!草花は季節で咲いたり枯れたりするね
人々は「永遠に変わらないもの」を庭におくことで、日々の生活で移ろいがちな自分を見つめ直す機会を得ていたようです。
飛石(とびいし)・敷石(しきいし)

飛石や敷石は雨の日に履き物や着ているものが汚れないようにするために置かれます。
また、庭全体を鑑賞した時の美しさも考えて配置される大事な要素でもあり、植物だけのフワッとした空間も飛石を効果的に置くことでぐっと景色が引き締まります。

人の移動のための動線と美しさとセンスが求められます!

庭師さんってすごいんだね
飛石は石同士を離して設置し、敷石は複数の石を連結させて面になるように設置したものです。
使われる石は真・行・草の形態が表れ、長方形の切石を並べたものからランダムな形を芸術的に敷き詰めたものなどさまざまです。
灯籠・灯篭(とうろう)

灯籠は伝統的な日本の照明器具です。
屋内では木と紙で作られたものが神棚に置かれますが、庭など屋外では石、または吊り灯籠は金属でできたものが使われています。

石製は花崗岩(御影石)、金属は銅製が多いようです
灯籠はデザインが豊かですが、大きく分けて3つの種類があります。
- 織部灯籠:民家でも見られ、蹲・手水鉢の鉢明かり。火を入れる火袋部分が四角柱で高さ調節ができるものもある
- 春日灯籠:神社仏閣で最も一般的
- 朝鮮灯籠:朝鮮から渡ってきた灯籠やそのデザインを使ったもの
蹲(つくばい)

蹲は露地(茶庭)に置かれた庭を彩る配置物のひとつでしたが、一般民家にも取り入れられていきました。
蹲は上の写真のような構成物で成り立ちますが、手水鉢(ちょうずばち)だけおかれたものもあります。
- 手水鉢:手を清める
- 前石:手を清める時の足場となる石
- 手燭石(てしょくいし):手水鉢の左に置かれ、持ってきた灯りを置く場所
- 湯桶石(ゆおけいし):手水鉢の右側や右足元に配置され湯を溜めた桶を置く平たい石
- 水門:こぼれた水を受けるために敷き詰めた砂利石
「つくばう」というのは「しゃがむ」「うずくまる」という意味だそうです。茶室に入る前に身を低くして手を清めたのが始まりです。
手や身を清める場所であることからも分かるように、茶室という特別な空間への結界としての役割もありました。
鹿威し(ししおどし)

「かっぽーーん」という音で知られる鹿威しですが、元は名前の通り動物を威嚇するための農具でした。その風流な音が気に入られ庭に取り入れられたのです。
農作物を荒らす動物をおどすためにかかしと一緒に用いられていました。竹筒の水がいっぱいになると重みで水がこぼれ、空になり軽くなったと同時に勢いよく石に叩きつけられ音が鳴る仕組みです。
竹垣
竹垣は庭の背景の有無を決める重要な役割があります。
「四目垣(よつめがき)」や「光悦寺垣(こうえつじがき)」は背景を見せたい時に使います。

背景を見せず目隠しとして使うのが「沼津垣(ぬまづがき)」や「建仁寺垣(けんにんじがき)」です。


庭の背景が見えるのと見えないのとでは全然印象が変わりそうだね
町屋の坪庭の構成

寝殿造が盛んだった頃、建物と建物の隙間の小さな空間を「壺」と呼んだことから坪庭と呼ばれるようになりました。
坪庭は細長いつくりの町屋をとにかく明るく、風通しよくするための工夫が狭い空間に散りばめられています。
苔やシダは足元の照り返しを防ぎ、木々を配置することで温度上昇を抑える。ただし、通風や採光の妨げとならないように背の低いものや葉の小さい竹など日陰で育つもの
水を含ませて吊るすことで室内に涼しい風を取り込む

水を常に張っておくことで冷気を生み、打ち水にも使われる。また水琴窟を地中に設置することもある

水琴窟は手水鉢からしたたる水滴が蹲(つくばい)の水門に落ちて、
地中に埋めた甕(かめ)の中で琴の音のように響かせるものです

すてき!聞いてみたい!
打ち水ができるように砂利を敷き詰める。また白っぽい砂や砂利を敷き詰めることで空間を広く明るく見せる効果がある
小さな空間にも詰め込まれた配慮や信仰
動画の世界が熱い最近の世の中は写真すらつまらなく感じる人もいるようですが、そんな中で石ほどつまらない存在もないように思えます。
石コレクターの方が多くいますが、正直石を座布団みたいな敷物の上に置いて何をしてるんだろうと思っていました。すみません。今回の記事を書き終えた今、私はちょっと石が欲しいです……。
庭づくりをする際、石を探しにわざわざ山に何度も通う人もいるそうです。形や大きさだけでなく、自分に合う石や良い「気」のするものを求めるのですね。
今も昔もただそこにあるだけの石。人の向き合い方だけで存在も意味も変わり、それ自体は何も変わらないのに、精神的に人に変化を与える不思議な自然物です。
そんな石の存在、実用的で芸術的な飛石、結界にもなる蹲など民家にこれだけの配慮や自然への信仰が詰め込まれた意味ある空間が古民家の庭です。これからは特別な空間として静かに鑑賞してみたいですね。
<参考書籍・参考サイト>宮元 健次「雑学3分間ビジュアル図解シリーズ 神社・寺院・茶室・民家 違いがわかる!日本の建築」株式会社PHP研究所(2010)、川上幸生「古民家の調査と再築」一般社団法人住まい教育推進協会(2019)、楽水園「豊かな「敷石」の世界」、京都府造園協同組合「朝鮮灯篭」、埼玉外構「蹲(つくばい)とは?その歴史から構造までを解説」





