床の間はもともと室町時代の武士の家に見られた書院造の座敷飾りを構成する一つであり、家の主人の後ろに掛け軸や生花などを飾って家の主人の威厳やおもてなしの心を表していました。
書院造は和の建築の原点ともなっており、宴会の席などで「上座」「下座」とされるのは当時床の間での位置関係と身分によって決めていた席次の名残です。
床の間は江戸時代になると庄屋など一部の有力な民家の家にも設けられるようになり、一般家庭の客間に取り入れられたのは明治に入ってからです。一般人は外国ものが入ってきた文明開花だけでなく、実は古くからの日本文化ともこの頃出会っているのが意外ですね。
では今回は床の間を含めた座敷飾りの構成や床の間の種類について見ていきましょう!
座敷飾りを構成する 床の間・違棚・付書院・帳台構
座敷飾りは客間などの座敷を飾った床の間、違棚(ちがいだな)、付書院(つけしょいん)、帳台構(ちょうだいがまえ)の4つからなります。これらが決まった配列で1つの部屋に設けられます。名前は知らずとも見たことがあるものがあるかと思います。
まずは床の間について紹介します。
床の間は主に4種類
床の間は座敷の正面上座に設けられます。生花や置物、壁には掛軸や書を飾ったりします。床板を設置して畳と高低差をつけているものをよく見ますが、床の間にはその他にもいくつか種類があります。
本式の本床(ほんどこ)
畳より一段床板を高くしてあるのが本床です。化粧材の床框、床柱、落し掛け、その上に小壁のセットになっている本式の床の間です。
畳と一続きの踏込床(ふみこみどこ)
踏込床は本床を簡略化したもので、畳と床面を同じ高さにしてあるものです。床框を無くした分ややくだけた形式の床の間です。
可動式の置き床(おきどこ)
置き床は動かすことのできる床の間です。簡単に持ち運びができ、部屋の隅においてここが床の間とすることができます。現代でもマンションの和室などに手軽に設置できる床の間として床板が販売されています。
吊り下げた床の間 吊り床(つりどこ)
床を天井から吊り下げてある形式の床の間です。吊り床は床框も床柱もなく、壁床ともよばれます。下は置き床と併用して使われたり、座敷の畳のままだったりします。下が自由なスペースとして使えつつ床の間の形式は保てる床の間です。
実用的に使われていた違棚(ちがいだな)
違棚は床の間のすぐ隣につくられます。上段と下段に分けた2つの棚を互い違いに設置し、床の間に近い方に上段が取り付けられます。
昔は置くものが決められており、上段には筆、香炉、冠などを置き、下段には書物や巻物、硯箱や壺などが置かれていました。上段の端には筆返しが付けられ置いた筆が転げ落ちないようになっています。現在も筆は置かずとも装飾として残っていることがあります。
書斎 付書院(つけしょいん)
付書院は単に書院とも呼ばれ、床の間の隣の縁側沿いに取り付けられる開口部です。出窓のような形で小障子から光を取り入れ机が備え付けられます。現在の書斎机のように使われていました。
寝室へ続く帳台構(ちょうだいがまえ)
帳台構はもともと寝室へと続く小さな入り口の装飾のことをいいました。納戸構とも呼ばれ、帳台や納戸は寝室の意味がありました。また、帳台構は小さな小部屋になっており武士が主人のもしもの時のための待機した場所とも言われています。
今でも床の間あっての和室
古民家どころか現在の和室にも取り入れられる床の間。座敷飾りとまではいかずとも床の間だけは今でも一般的に認知され残っています。なんとなく床の間あっての和室というイメージがありますが、置き床がネット販売までされているのには驚きました。
再生された古民家のお店などではなくなっている場合が多く、なかなか昔のままの座敷飾りや床の間には出会えないかもしれません。縁側の隣に付書院、床の間と続きますので縁側を目印に昔あった床の間の位置を想像してみるのも面白いかもしれません!
<参考書籍・参考サイト・一部写真提供>
宮元 健次『雑学3分間ビジュアル図解シリーズ 神社・寺院・茶室・民家 違いがわかる!日本の建築』株式会社PHP研究所(2010)、京町家【楽遊】堀川五条「吊り床」、家づくりを応援する情報サイト「違い棚(ちがいだな)とは」、casanavi「床の間について(後編)」、コトバンク「帳台構」、写真提供:photoAC、イラスト提供:illustAC