今回は古民家の入口にまつわる用語たち。昔の家には入口が3つもあったようです。大戸口、厩口、背戸口それぞれどんな入り口だったか見てみましょう。今ではなかなか見ない関守石についても解説しています。
大戸口(おおとぐち)
3つの入口のうち、メインとなる一番入口で、今の玄関にあたるものです。大戸という大きな建具が設置され、写真のように雨風がない限りは昼間は開けっ放しでした。
町屋や商家では人や物が通りやすいようにされており、そのまま通り土間へつながっています。
町屋や長屋によく見られ、土足で玄関から裏口まで廊下のように通り抜けられる。通り庭とも呼ばれる
妻入(つまいり)と平入(ひらいり)
日本建築のメインとなる出入口には2パターンあり、妻入と平入といいます。屋根の棟に対して直角の妻側にある出入口が妻入、棟に平行な平側にある出入口が平入です。
小さな建物は妻入、大型の建物は平入の傾向があります。ただし、入口は建物の顔。用途、立地、屋内の構造や周囲との調和などによってどちらを出入口にするか、また両方に設置するか考えられていました。
建物の端(つま)は配偶者の妻の語源にもなっています。昔は妻がいつも家の端にいたからなんですね
厩口(うまやぐち)
厩口は通常大戸口のすぐ隣にあります。言葉通り、馬の出入口でした。馬は昔の農家さんにとって大事な動物。家の中に入れて一緒に生活していたそうです。人間と馬が一つ屋根の下で暮らしていたことを想像するとほっこりします。
お互いのイビキをうるさがったりしたのかな?
背戸口(せどぐち)
背戸口は大戸口のちょうど真裏にある裏口のことです。背戸、裏戸、裏戸口など色んな呼び方があるようです。
上述した通り土間は大戸口からこの背戸口までつながっていることになります。町屋や長屋では表から裏まで人も風も通り抜けられる戸でした。
こういう立派な裏口があるお家は最近はなかなか見ないですね。
関守石(せきもりいし)
留石や踏止石(ふみとめいし)とも呼ばれ、立ち入り禁止を意味しています。神社・仏閣や庭園で使われていたものは結界石とも呼ばれたようです。
丸い石に棕櫚(しゅろ)の縄で結ってあり、結び方もさまざまあります。
おわりに
今回は古民家の入口について解説しました。入口は必ずあるものなので何気なく通過していましたが、今後古民家探訪するときに、厩口や背戸口が今も残っているのか?残っていなかったらどのあたりにあったのか、探してみると楽しいかもしれません。
今はなかなか見ない関守石は筑前前原の古材の森で実物が見れますし、近くの神社やお寺でも見つかるかもしれませんね。
関守石、見つけたら入っちゃだめよ〜
(写真提供:photoAC)
<参考書籍>
宮元 健次『雑学3分間ビジュアル図解シリーズ 神社・寺院・茶室・民家 違いがわかる!日本の建築』株式会社PHP研究所(2010)