町家の格子の役割と種類。職業別で変わるデザイン

町屋の町並み古民家の空間と部位
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縦横に組み入れられた組子が並ぶ町並みはそれだけで風情があり、伝統を感じさせる風景ともなっています。

見ていると格子の形やデザインは色々ありますよね。これは職業によって違いがあります。また、昔の町家は一つの通りに同じ職業のお店が集まることが多かったため、連続的に同じ形の格子が立ち並ぶ美しい景観を作り上げていました。

それでは今回は格子の役割や職業別格子の特徴などを紹介します!

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格子の機能と配置されている場所

格子は縦横にわざと隙間をあけて組子という細い木を組み入れてつくられています。この隙間には目隠しと風通しの役割があり、設置される場所によって名称が違います。

目隠しと風通しの機能をもつ格子

格子は歩きながら見ているだけだと気づきにくいのですが、実は格子は外から中は見えにくく、中から外は見えやすくなっています。

どういう仕組みなのか私も分からず、家にあったすのこで試してみました。すると気付いたのが竪子(たてご・縦に並ぶ組子)を見る時の角度です。

目隠しになっている格子

中にいる人は外を見たい時立ち止まって隙間からよく見えますが、外の人は歩きながらなど動いていることがほとんどです。動いている人は竪子を正面より斜めから見ることが多くなります。

動きと一緒に目線が変わると見える角度が竪子の側面と正面の連続になっていくため、近距離で立ち止まらない限り中の様子は見えにくいのです。

また、夜は明るい家の中がよく見えてしまうように、格子やすのこも明るい外から暗い内部は見えにくくなっています。

また、木虫籠(きむすこ)と呼ばれる石川県金沢の伝統的な格子は竪子を断面にした時に台形になるようにつくられており、より一層外からの視線を遮ることができるようになっています。

格子は目隠しや防犯の役割と同時に、内にいる人と外にいる人がお互いの気配をなんとなく感じることができるあいまいな空間の仕切りとなっています。閉じられていながら開いているという不思議な感覚は内でも外でもない不思議空間の縁側とも通じるものがあります。

あいまいな空間といえば縁側

また、組子の隙間から光と風を通すことができるため、間口が狭いことで暗くなりがちな町家にとって大事な採光と換気の機能もあります。

木を組み合わせるだけでこれだけの役割を持つ格子は町家にはなくてはならない建具なのです。

格子の大別と配置される場所

格子は大まかに分類すると平格子(ひらごうし)出格子(でごうし)があります。平格子は柱と柱の間にあり、出格子は台格子、釣格子とも呼ばれ建物から突き出た出窓のようなつくりです。写真で見てみましょう。

虫籠窓(むしこまど)犬矢来(いぬやらい)も町家でよく見られます。虫籠窓は二階に設けられる採光と通風の窓です。縦の格子が等間隔に並び虫かごのように見えることから虫籠窓と呼ばれます。

また犬矢来は犬の放尿や砂利はね、泥はねから建物を守るために設置される背の低い柵で京町でよく見られます。

平格子や出格子には職業別にいろんな種類があるので紹介します。

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格子デザインとその特徴

格子の形状は親子格子(切子格子)、板子格子、細目格子、目板格子、吹寄格子などがあり、特に京都の町家に多くデザインは50種類にも及びます。下記はその一部です。

繊維関連の店に使われる切子格子のある親子格子

親子格子とは太い親竪子の間に細く上部が切られた子竪子(切子格子)が複数本入っている格子のことです。親付切子格子とも呼ばれ上部に採光しやすい隙間を作り、主に反物や針仕事などの手元をよく使う繊維関連の店に使われました。

切子の数で分かる職業
  • 切子2本……呉服屋格子
  • 切子3本……糸屋格子(紐屋格子)
  • 切子4本……織屋格子

基本的には切子の数で職業が変わりますが、地域や職業によって親竪子の本数が変わったり、切子の数は7本もあるお店もあったそうです。

丈夫に作られた米屋格子・酒屋格子

米屋格子

酒屋格子と米屋格子は基本的には同じつくりになっています。どちらも幅の広い竪子が使われ、隙間は大きめでしたので雨や虫はよく入り込んでいたようです。

酒屋格子と米屋格子の見分け方は、まず酒屋格子は紅殻塗りがされていました。対して米屋格子は糠の粉がくっつくので紅殻は塗らず木肌のままです。また米俵を積み上げるため、格子下部の土台の貫(横の組子)が二重につくられています。

紅殻塗り(べんがらぬり)

インドのベンガル地方から輸入されていた鉄が赤く錆びたような顔料

隙間を狭くした炭屋格子

炭屋格子

炭屋は当初格子はなく開放された入口でしたが、炭の粉が舞うためご近所に配慮して格子戸をつけるようになりました。炭の粉ができるだけ外に出ないよう炭屋格子の隙間は狭く作られています。その分中にこもって屋内はいつも真っ黒だったのかなぁと想像します。

格子柄が分かれている仕舞屋格子

仕舞屋格子(しもたやごうし)とは商いをしていない町家で使われる格子です。

以前はやっていたがすでに店仕舞いして隠居していることが分かります。特徴は格子の上下で柄が異なっており、下部は細めで、上部は欄間とは異なるものの荒い柄の格子がはめられています。

何気なく見ていた格子でしたが、形状やデザインに注目してみるとまた新たな発見がありそうです。地域性もでるものですのでぜひ旅行先などでも注意してみておきたいですね。

格子以外でも外観から分かる町家の種類

<参考書籍・参考サイト・写真提供>

宮元 健次『雑学3分間ビジュアル図解シリーズ 神社・寺院・茶室・民家 違いがわかる!日本の建築』株式会社PHP研究所(2010)、BOTANICA「木虫籠(きむすこ)とは?構造や魅力を紹介!目隠しフェンスにもなる?」、京町家改修用語集「親子格子とは?(おやこごうし)」、Digi Style京都「【第7回】京町家のデザイン (その1)格子と町並み 」、写真提供:photoAC

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