伝統的なつくりの古民家は家の内外でたくさんの部材が組まれているのを直接みることができます。どの木がどんな役割をしているのか知っていると、古民家を見るときの楽しみも増えますよ!
今回は主に棟上げが行われるまでに組まれる伝統的な古民家の構造をみていきます。
家を建てる際に柱や梁などの構造を組み上げ、最後に棟木を上げる時に行われる伝統儀式で工事の無事を祈願する
(サムネイルの構造イラスト:川上幸生『古民家の調査と再築』一般社団法人住まい教育推進協会(2019)145頁参照して作成)
古民家は大黒柱からはじまる
大黒柱は伝統構法に特有のものといえます。家の間取りの中心に立てられ精神的にも心の拠り所となるような存在ですが、家の構造としても中心になる柱です。基礎として礎石が置かれるとまずは大黒柱が立てられ、大黒柱からどんどん梁や桁、他の柱や差し鴨居、貫、屋根や軒桁へとつながっていきます。
大黒柱から四方に構造材がつがれていくため、大黒柱には部材を差し込むホゾ穴がたくさんあけられていきます。そのため他の柱とは違う良質で太く、大きな広葉樹のケヤキや桜が使われました。特にケヤキは硬く耐水性や耐久性に優れ木目も緻密で美しい木で大黒柱には最適と考えられていたようです。
大黒柱に次ぐ太さの柱は中黒柱、次に小黒柱と呼ばれそれぞれ複数本ありますが、大黒柱は1本しかありません。
家を強く、免震的なつくりにする数々の横架材
古民家でたくさんの横木が横たわっているのを見ることがあります。古民家再生されたお店でも天井を見上げるとたくさんの梁や桁が並んでいたりします。
伝統構法では床下から、足固め、差し敷居、差し鴨居、貫、さまざまな種類の梁や桁などとにかく横架材をこれでもかと階層的に何重にも設置します。それによって台風や地震の多い国の家を支えてきました。
床下にある足固め(あしがため)
足固めは床下で柱と柱をつなぐように取り付ける横木です。地震や台風など外から力が加わったとき、家の足元が開かないようにする構造上とても重要な役割をもっています。
慣用句としても万が一に備えて「足を固めておく」など使われます。
玄関先の敷き土台(しきどだい)
足固めは礎石から100mmほど離して設置されますが、玄関先の構造でも似たような役割で敷き土台があります。礎石に直接乗せられ玄関の軒先を支えます。
古くなった家に住む高齢者がバリアフリーのスロープをつけるためにリノベーションし、この敷き土台を切ることがありますが構造の強度は落ちてしまいます。
家も支える差し鴨居・差し敷居
敷居や鴨居といえば建具をスライドさせるために取り付けられるレールを想像しますが、差し鴨居と差し敷居は大きな断面の材木を使って建物を支える構造材としての役割も持ち合わせます。
必ず鴨居と敷居が対となって取り付けられるため強度もアップします。
梁(はり)と桁(けた)
桁は建物の長い辺にかけられる横架材で、梁は建物の短い辺の方にかけられる横架材です。
代表的な梁と桁を紹介します。
屋根を支える小屋梁(こやばり)
小屋梁は天井の上にあり、丸太や丸太の両端を切り落としただけの太鼓梁(たいこばり)など断面が大きなものが使われました。
木を製材せずそのまま乗せました!といった感じになるので見えているとものすごい存在感です。
軒先を支える軒桁(のきげた)
屋根の垂木を受けて、小屋梁とクロスするように取り付けられるのが軒桁です。在来工法の桁は製材されたものが使われますが、伝統構法の軒桁は製材されたものも丸太のまま使うものも両方あります。
牛梁(うしばり)・登り梁(のぼりばり)・甲乙梁(こおつばり)
牛梁は小屋梁を中間で支える太い梁です。「うし」とも呼ばれ、桁行方向(家の長い辺の方向)をこの牛梁一本で通す古民家も多く、10m近いものもあります。
登り梁は屋根の勾配に合わせて斜めにかける梁で、通常の梁と比べて水平ではありません。
甲乙梁は大きな梁の間に入れられる小梁です。床の下地材である根太の役割も兼ねて大梁の間に2〜3尺(3尺=約91cm)間隔で入れ、4寸(約12cm)くらいの短いものが使われます。
1軒の古民家で使われている部材は数100本と言われるため、なかなか実際の家を見て梁の区別などは難しいものです。たくさんの古民家に出会ってじっくり勉強していきたいですね!
<参考書籍・参考サイト>
川上幸生『古民家の調査と再築』一般社団法人住まい教育推進協会(2019)、川上 幸生『古民家の雑学53』Amazon.com(2013)、イエテク「棟上げとは何か?上棟式の目的や費用から服装のマナーについても詳しく伝授!」、TEORIA WOOD「【保存版】一般住宅で使われる”木の種類と特徴”比較10選」、家づくりを応援する情報サイト「根太(ねだ)とは」