古民家カフェなどですぐに古民家らしさを感じるのは、普段はあまり見ることのない柱の黒っぽさと漆喰などの白のコントラストだったりします。
現代の住宅のほとんどは柱が隠されている「大壁造り」ですが、古民家はこれらがどーんと見せてある「真壁造り」で家の強さや存在感のようなものを感じることができます。
古民家で一般的な真壁(しんかべ)のつくり
真壁は、土壁に漆喰や板などで仕上げた壁を貫を通した柱の内側に収めます。そのため柱が見える形になり、和室でよく見られるように日本の伝統的な工法です。
柱に穴を掘りぬき、柱同士を繋ぐために貫き通す横材
壁の種類は主に2つで、真壁はどちらにも取り入れられます。
- 外壁:屋内と屋外を隔てる
- 内壁・間仕切り壁:屋内の部屋同士や廊下などを隔たり、間を仕切ったりする
真壁には塗り壁と張り壁があります。塗り壁は小舞竹を組んで土壁や漆喰を塗り、張り壁は下地合板に壁紙などを張って仕上げています。
デザインも考慮された真壁の見える柱
真壁の柱の役割は構造材として家を支えるだけではありません。人の目が直接触れるところでもあるため意匠(デザイン)も工夫され、また傷などがつきにくいように角を削って保護されます。これを面取りと言い、削る角の大きさによって七面取りや五厘(りん)面など細かく種類が分けられています。
また、柱と壁が接触している箇所を深さ6mmくらい削り取る職人技があります。散りじゃくりといい、自然素材である木材や塗り材が乾燥や収縮で散り切れが起こることを想定して、壁に空く隙間を見えないようにするために施されます。
現在リフォームされている古民家カフェなどでも柱はよく見ることができるので、面取りなど注目してみるとおもしろいかもしれません。
地震に強い柱を隠した大壁(おおかべ)
大壁は柱などを壁で包み込んで構造材をすべて壁の内側に収めます。古民家にも用いられていますが、最近の壁はほとんどがこの大壁です。大壁は日本の木造住宅だけでなくアメリカから来たツーバイフォー工法や鉄骨組の建物など広く取り入れられています。
真壁と大壁を両方取り入れた併用壁
片面は真壁、反対側は大壁と両方の構造を取り入れた壁です。新築や古民家リフォームでも両面真壁が用いられることは少なくなりましたが、代わりにこの併用壁と大壁で壁を作ることが多くなっているそうです。
下の写真は福岡 筑前前原の古材の森です。2階部分が外から見ると柱が見えない大壁です。
角度は違いますが、2階内部は柱が何本も見えます。
耐震性がありスッキリした外観で見せつつ、内部では築120年の柱に触れることができます。
また、大壁を真壁に見せるために装飾用に埋め込まれた柱もあり付柱(つけばしら)と呼ばれます。
壁も記録も残しておきたい真壁造り
最近は和室自体が少ないのでなかなか真壁を見ることもないかもしれませんが、古民家においてもリフォームの際に大壁に変えることが多いようです。理由としては断熱材を均等に入れられたり、電気配線なども入れ込むことができるためです。耐震性も大きな魅力ですね。
ただやはり直接木の温もりや、調湿効果、和の雰囲気を出すには真壁が有利でしょう。減少しているおともあり、その壁があるだけで特別感が増します。
また、古民家は古いからこそ定期的な家の点検が不可欠です。古民家鑑定においても、構造材がすべて隠れてしまっている大壁は目視確認が難しく、建設時や改装時の記録がない場合は正確なつくりが把握できない場合もあります。DIYする場合でも自分できちんと記録しておくのが大切になってきます。
<参考書籍・参考サイト>
川上幸生『古民家の調査と再築』一般社団法人住まい教育推進協会(2019)、家仲間コム「真壁と大壁の違いとは|大壁へのリフォーム方法と施工事例」、RENOLAZE「真壁と大壁 2つの壁の違いとリフォーム時のメリットを知ろう」