10回目の古民会ははじめて福岡を飛び出し、長崎県の波佐見を訪ねました。古民家のみならず陶芸や暖かいご夫婦に出会えたなんとも濃ゆい濃ゆい1泊2日。短かったようで長かったような、帰って時間が経った今でもその余韻に浸る日々です。
美のり窯は築100〜150年以上
美のり窯は長崎県東彼杵郡波佐見町折敷瀬郷にあります。うーん、読めない!笑(「ひがしそのぎぐん はさみちょう おりしきせごう」です。)地方あるあるなんでしょうか、結構読めない地名が多いわりに地元民には違和感ないせいかフリガナがふられておらず、なかなかまあ読めないのですねぇ。あはは。
ワタワタしないようにナビはあらかじめ入力すべし!
ちなみに古民会はいつもワタワタしてます!
美のり窯はその名前の通り窯元です。焼き物の製造工程では「生地屋」を担当するかたわらで、ご自身の作品を作る工房もお持ちです。民泊と希望があればろくろや絵付体験も申し込むことができます。
上の3枚目はゆるこ作ですよ!美のり窯のお父さんによる補修がたくさん入ってきれいな器になりました!笑
そんな美のり窯ですが、民泊ができる住居側は築100年以上、隣接する建物も元は人が暮らしていたようで残っている土間部分がギャラリーとして残っています。こちらは築150年以上のようですが、正確には分からないとのことでした。みた感じ、古民会最古の風格であります!
お庭のヤマモの木(ヤマモモの木)は樹齢150年以上!ずっとお家と家族を見守ってきたのですねぇ…
美のり窯 大正8年生まれの住居へ
美のり窯に入ると右手にお庭、正面に住居が見えます。見上げる大きなお家は堂々たる存在感があるものの、なんだか田舎の親戚のおうちにでも来たかのような懐かしさを感じます。ただいまー。
ところで美のり窯のご夫婦はお客さんたちにも「お父さん」「お母さん」と呼ばれています。みんなのお父さんとお母さんなのです。玄関でおふたりがにこにこしながら出迎えてくれました。ウェルカム羊羹とお茶を頂いているうちにすっかり和んだら、早速築100年以上のお家を拝見させて頂きます。
美のり窯 玄関
玄関をくぐると目の前にお手製の暖簾がさがっています。お父さんの直筆がなんとも味があっていいのです。
建てられた頃からあるというタンス。なかなかの年代ものではありますが、「もう靴いれてんのよ」と普通に使っているのがすごいです。いいものを自然に普段使いできるってかっこいい。他に客間にも古いタンスや衣桁がさりげなく置いてあったりするんです。
ハンガーラック。衣紋掛けなど他にも呼び名は色々。
広い玄関には木枠の格子にはめ込まれたすりガラス。きれいですね、テンション上がりますね。低い天井にこの少し薄暗い空間は遠方からやってきた人たちにもほっとする落ち着きを与えてくれます。
美のり窯の住居の建物は数年前にリノベーションが行われたものの、天井や欄干などの建具はすべて当時のままです。
客間から縁側をのぞむ
ゆるこが一番好きな空間。ここの縁側は素晴らしい。網戸だけにしていると風が通ってとてもとても気持ちがいいのです。寝れます。昔の家はとにかく風通しがいい。どうして現代建築は縁側を無くしてしまったのでしょうか。
なんでも手に入るようになった世の中で、
ゆるこが欲しくてもどうしても手に入らないもの、それが縁側……
そして長押や柱が太いですね〜。幅広のがっしりした木が支えています。
室内の壁を囲む横木。障子など開閉できる扉のすぐ上にある
美のり窯 築150年以上のギャラリー
住居よりもさらに古いのがギャラリーとなっている建物です。推定150年以上。お父さんによると「親戚のおばさんは色々知っている人だったけどその人でも正確には分からんって言いよったもんね」とのこと。住居部分と違ってほぼリノベもされていないのでこのギャラリーだけ雰囲気が違います。
入り口には格子のガラスがはめ込められた引き戸の前にお父さんたちの作品が並んでいます。奥に見える糸車は実際に使われていたもの。
リアル『たぬきの糸車』?!
美のり窯 ギャラリー入口
古民会では今まできれいにリノベーションされた古民家しか訪ねたことがありませんでした。古民家の使えるところを残しつつも、古色塗装した新材も取り入れられて違和感なく古民家「再生」されたものや「古民家風」となった建物です。ですがこのギャラリーは一部補修はされているものの、再生されたものでも古民家風でもなく、なんと「昔そのまま古民家」なのです!これは新しい。いや、古いんだけど新鮮!今も現役で使われているそのままの古民家、今どのくらいあるんでしょうね……。
古材と新材を使うことで色の不調和を解消するために古材に似た色を新材に塗ること。柿渋に松煙などの顔料を混ぜたものが使われる。
柱や梁、格子、建具まで色が全部まだらになっていて月日を感じさせます。長い年月、風雨にさらされてきたとは思えないほどの現役感でどっしり立っています。そう、この建物、位置的に大きな住居と工房部分に挟まれて、外から見るとかなりこぢんまりして見えるのですが、近づいて見ると「おれ、ずーーっとここにおったけんね」というような年長者的存在感を急に感じるのです。
庇の一部と正面上部の縦格子は一部修復がされているように見えますね。この縦格子の右部分に、数本もとの縦桟が残っています。一本一本不揃いに細くなったその桟をみていると雨やら風やら虫やら色んなものがこの隙間を通り過ぎていったのだろうなぁと想像します。普通修復する時、「もう全部作り直しちゃお」となりそうなものですが、この数本だけ残ってるというのがいいのですねぇ。ありがとう、ありがとう。
下の縦格子にはお父さんたちの焼き物が貼り付いてるのがかわいいね!
美のり窯 ギャラリー内部
入口から窓越しにギャラリーの中を覗いてみます。お父さんとお母さんの作品が並んだこの空間、古民家と調和して素敵な雰囲気です。
このガラス、くもり模様でうっすらと絵が描かれています。周囲が反射して上手に撮れませんでしたが、上の方にうっすらと山々が描かれているのが分かるでしょうか。ゆらぎガラスでこれも恐らく建てられた頃から張り替えられていないそうです。
昔の製法の手吹きで作られたガラスは、機械で作られたもののようにきれいな平面にはできないためガラスが波打っているように見える。レトロガラスとして今人気がある
もう一つの入口から覗くギャラリー内部。雰囲気あっていいでしょう、そうでしょう。ここでは昔醤油や味噌作りもしていたようで、なんと梅雨時期になると今も残る麹菌で土の表面が白くなるのだとか!そんなことを聞くと、ほんとにここに「生活」があったんだなぁとじわじわ感じます。
ギャラリーではお父さんが書いた躍動感あふれる魚の墨絵も必見です!
ギャラリーの照明はなんと昔のお米のじょうご……お、おしゃれすぎる……
お父さんが「もうここの壁壊そうかな」とぶち抜いてみたら出てきた竹組み。「いい感じだったから丸くくり抜いた」お父さんのセンス!この壁は竹を藁で組み、もとは漆喰が塗られていましたが、今は珪藻土が塗られています。他の壁は昔の土壁のままです。
すぐ隣が牛小屋だったため、向こうから牛のツノで突き破られた箇所までありました。牛も人と一緒に一つ屋根の下で暮らしていた時があったんですね。
見上げれば立派な梁。小さな空間の中で天井も低いので一層迫力があります。150年以上もひどくカビたり腐ったり壊されたりすることもなく今も存在しているって奇跡みたいなことだよなぁと改めて思います。
ゆるこは数十年しか生きてないのに時々腐ってるよ……
古民家も人間も風通し良く生きたいね〜!
美のり窯を味わう
美のり窯での民泊はお食事をつけてもらうこともできます。今回は1泊2食でお世話になりましたが、そのお料理の豪華でおいしかったこと!そして何よりメニューだけでなく、食事しながらお父さんとお母さんと色んなお話ができました。この時間で本当にすっかり親戚のように仲良しになってしまうから不思議です。
この日の夕食のメインは魚介たっぷりのアクアパッツァ。他にも牡蠣のグラタン、お父さんが捌いたお刺身や手羽先、鯛めしなどなど次から次に出てきて、ゆるこもマドレーヌさんもはちきれんばかりのお腹を抱えることになりました。
2ヶ月後くらいにもう一度訪れたら、とろっとろの牛肉のトマト煮込みが絶品でした!毎度いろんなメニューを考えるお母さんはすごい!
朝食は前の晩から浸しておいたというフランスパンのフレンチトースト。起きた時から甘い良い匂いがおうちの中に広がっていました。古民家のすてきな縁側で朝からこんなおしゃれな朝ごはんをたっぷり頂いて幸せな一日のスタートになりました!
お料理にはタイミングが合えば美のり窯のお庭で育った新鮮なお野菜も頂けますよ
お家の中は至る所にお母さんが飾ったお花が美のり窯の焼き物に生けてあります。本当に何気ないのですが、こういうささやかなしつらいができることに憧れます。家に帰ったら野の花を摘んで自宅に飾ろうと密かに思い描くゆることマドレーヌさんなのでした。
手づくり工房 美のり窯 民泊情報
住所 :長崎県東彼杵郡波佐見町折敷瀬郷696
TEL : 0956-85-3818
<定休日> 不定休
<駐車場>有
ご予約はメールよりお電話が助かるそうです!