古民家など木造住宅にみられる板床と4つのはぎ合わせ方

板床サムネイル古民家の空間と部位
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通常畳の下には板を貼った荒床があったり、板床のつなぎ合わせ方にも本実矧ぎや雇い実矧ぎなど、よく見ると床にも色々と種類があります。

木造住宅に欠かせない板床にはどんな種類があるのか、古民家を訪ねた際には足元にも注目して楽しんでみてください。

ゆるこ
ゆるこ

DIYや古民家リノベーションを考えている人にも

意外とこだわり要素になるかもしれません!

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床はいつ作られるようになった?

高床式倉庫

そもそも床は「高床式倉庫」から始まりました。生活の家ではなく、食料保存のための倉庫で作られました。古くはなんと縄文時代からあります。

ゆるこ
ゆるこ

高床式の建物は東南アジア、ヨーロッパ、アフリカ、ニュージーランドなど

世界中で見られるポピュラーな建物です

その後、居住のための家に床が取り入れられるようになったのは奈良時代以降です。(それまでは土間など土の上で生活していました。)

平安時代になると室内全体に板床が貼られ、その内断熱や生活空間の快適さを求めて畳が敷き詰められるようになります。

現在も残る生活様式
  • 「居る」「座る」「寝る」:畳
  • 「歩く」「移動する」:板床

ただし、現在は古民家もフローリングの板床のみにされることが多く、視野に入る面積が多くなることもあります。そのため美しく仕上げることも重要です。

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床に使われる縁甲板(えんこういた・えんこいた)

縁甲板は移動する場、廊下でもあった縁側に張られた板から由来しています。現在はフローリングと同意義で使われることも多いようです。

縁甲板は無垢の板材で大体の規格が決まっています。

長さがすべて一定のものである場合は定尺と呼ばれます。幅は同じであるものの長さにバラつきがあり一定でないものは乱尺と呼ばれ比較的安価です。

縁甲板の規格
  • 厚さ:15mm ~ 30mm
  • 幅:105〜120mm
  • 長さ:
    • 定尺:1,820mmまたは3,640mmが一般的
    • 乱尺:その時ある長さのものを組み合わせて使う

檜、サワラ、杉、松など長さを取りやすい針葉樹が使われます。

床に使われる板材は縁甲板、壁や天井に使われる板材は「羽目板」と呼ばれます。

縁甲板には「実加工」が施されます。

実加工(さねかこう)

(出典:Amazon)

実加工とは縁甲板同士をつなぎあわせるために板の側面に凹凸(おうとつ)をほどこすことです。

このつなぎ合わせ方を矧ぎ合わせといい、いくつか種類があるので紹介します。

DIYにも使いやすい

代表的な4つの矧ぎ合わせ(はぎあわせ)

実加工を施すことによって板の長辺方向に板同士を繋ぎますがこれを矧ぎ合わせといいます。

下に出てくるイラストは板を側面から見たところです。

本実矧ぎ(ほんざねはぎ)

本実矧ぎは最も一般的です。一方の板の側面に溝をほり、もう一方の板には実(さね)と呼ばれるでっぱった部分をつくります。

先ほどの写真のようにお互いの凹凸に噛み合わせてスライドさせることで隙間なく板を床に敷き詰めていくことができます。

表面に釘の頭を出さないため納まりがいい矧ぎ合わせ方になっています。

雇い実矧ぎ(やといざねはぎ)

別の部材の「雇い実」という細い棒で矧ぎ合わせる方法です。つなぎ合わせたい板のそれぞれの側面に溝をほり、そこに雇い実を差し込むことで2枚の板を合わせます。

相じゃくり実矧ぎ

相じゃくりとは、板の厚みの半分を剥ぎ取ってお互いの溝にはめ合わせることです。

薄い板など、あまり側面に複雑な加工を入れることができない場合はこのシンプルな矧ぎ合わせがよく用いられます。

その他の矧ぎ合わせ方

床板の矧ぎ合わせ方には他にも「蟻ざねはぎ」、「相互はぎ」、「傾斜はぎ」、「だぼはぎ」などがあります。

古材の森のヘリンボーンの床
築120年の「古材の森」の縁側に残るおもしろい張り方をした床

さまざまな矧ぎ合わせ方がありますが、今は床材自体はどれも機械で製材されることがほとんどです。

どの矧ぎ合わせ方もお互いの溝部分がずれても雇い実のサイズが違ってもはまらないため、これを手で1枚1枚作っていた昔の職人さんはやはりすごいのです。

畳下地の荒床(あらゆか)

荒床

普段目に見えない部分ですが、畳の下地として張られる床に荒床があります。無垢材で塗装などの仕上げがされていない板材を使うため荒い床と表現されています。

実加工ではありませんが「突付け矧ぎ」や「いも矧ぎ」とよばれ、床材を突き付けて並べて敷き詰め、釘や接着剤で留めていく方法です。

昔は松や杉が使われましたが、最近は合板を張ることが多いようです。

合板は安価で取り入れやすくはありますが畳の調湿作用が発揮されず、耐久性が落ち傷みやすいため長期的に見ても無垢の荒床を張るのがコストパフォーマンスは期待できます。

合板(ごうばん)

ベニヤ板を複数枚重ね、接着剤で貼り合わせた木質材料

畳について詳しくはこちら

無垢床のデメリット

杉の無垢材 木目

毎日接することになる床ですが、きちんとデメリットも知っておくとそれを踏まえた古民家のリノベーションやDIYに取り組めます。

無垢の床材には
  • 節や入り皮が入ることがある
  • 乾燥などで床が反ったり、収縮したりすることがある
  • 施工時、傷や割れが入ることがある
  • 杉など傷がつきやすい種樹もある
ゆるこ
ゆるこ

入り皮は、木の成長過程で樹皮に傷がついた部分で

傷周辺の組織が傷を巻き込んで成長したところです

マドレーヌさん
マドレーヌさん

節や入り皮は無垢材ならではの模様として楽しむこともできるよね

もちろん、きちんとした施工を行うことでこれらの問題はかなりカバーできますが、自然のものでもあるため木の乾燥や収縮は避けられないところでもあります。

その度に上手に補修していくなど、直しながら住むという古民家のおもしろさと捉えられると最高ですね。

無垢材を使った床は木特有の良さを肌で感じることもできる大事な要素でもあります。木についてよく知ることでうまく付き合っていきたいものです。

木を使うことのメリットはこちらで!

<参考書籍・参考サイト>

川上幸生「古民家の調査と再築」一般社団法人住まい教育推進協会(2019)、TOTOリモデルサービス「「 縁甲板(えんこういた)」とは(住宅建築 用語解説)」、Lifeなび「木材の接合方法の「本実はぎ」の方法。」、福田工務店「雇い実矧ぎ」、無垢フローリングと木材の販売 材木屋「Q. 相決り加工とは何ですか」

ネット通販のほか、古民家再生協会の公式ページからも購入できます
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